#750
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<'99Wユース決勝> 黄金世代 「完敗から手にしたもの」 ~遠藤、稲本、小野たちの11年前~

2010/03/26
11年前、若き日本代表が世界の頂点まであと一歩と迫った。
彼らが“黄金世代”と呼ばれる所以である。
だが決勝で喫した敗北にこそ、特別な意義があった。

 自分のサッカー人生で一番印象に残っているのはどのゲームだろう。

 その質問に遠藤保仁は、ボソッと答えた。

「ナイジェリアのスペイン戦やなぁ」

 1999年、ナイジェリアでFIFA主催の世界大会であるワールドユースが開催された。U-20日本代表は、その大会で準優勝という偉業を達成した。

 スペイン戦は、その決勝である。

 当時を振り返ると、ナイジェリアの環境は、日本だと考えられないくらい、かなり劣悪なものだった。だからこそ、準優勝は非常に価値があったと今も思っている。

 日中の気温は40度近く、日が落ちても熱気と湿気が肌に粘りつき、体力を消耗させた。蛇口をひねるとコーヒー色のシャワーが出て、生ものはほとんど食べられない。部屋には5色のトカゲが頻繁に出没し、マラリアの予防薬を毎日欠かさず服用した。ホテルのエレベーターは度々止まり、グループリーグのイングランド戦で起きたように、停電は日常茶飯事……。こんな環境で選手は3週間も戦い続け、歴史を作ったのである。

なぜ遠藤は完膚無きまでの敗戦をベストゲームに挙げるのか。

 だが、遠藤の選択には多少の違和感もあった。ナイジェリアでのベストゲームというのであれば、間違いなく準々決勝のメキシコ戦だ。フラット3が完璧に機能し、アルゼンチンを破って上がってきたメキシコに何もさせず、2-0で完封勝ちした。

――なぜ、スペイン戦?

「あそこまでボッコボコにやられて、ボロ負けした試合は今までないからね。俺も何もできずに終わったんで……」

 決勝は、それまでの日本の活躍がウソのようにボコボコにやられた試合だった。

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photograph by Go! Yanagawa

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