メンバー落ちした前回大会の悔しさを胸に刻み、W杯で活躍する自分を思い描いて突き進んできた。名手ノイアーのニアサイドを打ち破った決勝弾は、“持ってる男”の後悔のない日々の結実である。
4年分の思いを、一撃に込めた。
ドイツとのグループステージ初戦、システム変更で試合の流れを劇的に変えた日本は、75分に堂安律が同点弾を決めたあとも攻勢を強め、1対1の状況で83分を迎えていた。
自陣右サイドでFKを得て、板倉滉がボールをセットする。最前線で待ち構える浅野拓磨は、「来るな」と感じた。
浅野と板倉は、ともに9月に膝の内側側副じん帯を痛めている。ふたりは日本サッカー協会がドイツに構える施設へ通い、リハビリに汗を流した。
「滉とは毎日顔を合わせていて、やれるよって励まし合いながらここまでやってこられた。ケガをしてから意思疎通ができているので、あ、来るなと思ったんです」
果たして、板倉は浅野を見ていた。
「リハビリを一緒にしているからか分からないけれど、良く目が合うんです。拓磨くんの動き出しが見えたので迷うことはなく、いいボールを届けたいなと思いました」
オフサイドラインを際どくかいくぐった浅野は、ファーストタッチと同時に縦方向へ加速する。後方からニコ・シュロッターベックが身体をぶつけてくるが、外へ押し出されることなく突き進む。ゴールエリア内まで侵入すると、右足でニアサイド上を打ち抜いた。
「正直ニア上を狙ったわけではないですけど、思い切って蹴った結果があそこにいって。ここで僕が狙ったと言ったら狙いどおりのゴールになりますけど、思い切ってやったからこそああいうコースにいったので。みんなの気持ちが強いぶん、そういうものがボールに乗っかるのかなと改めて思いました」
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by Atsushi Tokumaru