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[武者修行ファイターの証言]日本人がアメリカで勝つために

2022/08/26
5番街のアルティメット・ジムへ。平田樹はNYCの空気にすっかり馴染んでいた
PRIDE時代、日本は総合格闘技の最先端を走っていた。だが今や世界の頂は米国に移り、栄光は過去のものに。そんな中、最強を目指して海を渡った者たちがいる。彼らがMMAの聖地で見た現実と、世界との距離とは――。アメリカ各地で切磋琢磨する邦人格闘家たちの声を拾った。

 ある意味、日本は格闘技大国だ。首都圏では毎週のようにキックボクシングやMMAのプロ興行が行われている。だから、この国で格闘技にかかわっている人間は相当に幸福度が高いはずである。

 しかし日本の格闘技界に、プロ格闘家が最強を目指すという本来は欠かすことができないパズルのピースを加えると、幸福度は一気に降下する。そこには世界最強というキーワードが見つけられないからだ。

 キックボクサーはそれでも構わないだろう。キックは純然たる世界一が、存在しないスポーツなので、最高の舞台を日本で踏むことができる。だがMMAファイターはそうはいかない。MMAにはUFCという誰もが認める世界の最高峰が存在する。海外に頂点があるのがMMAだ。

 頂=UFCに続くベラトール、そしてPFL(プロフェッショナル・ファイターズ・リーグ)というメジャーリーグが存在し、そこに至るまでの登竜門的フィーダーショーや草の根イベントが群雄割拠状態のヒエラルキーのなかで、アジアにもシンガポールを拠点としたONEチャンピオンシップが根付いた。

 日本ではエンタメと融合し、独特な格闘技文化を形成するなか、これら世界のビッグプロモーションはあくまで格闘技そのものをエンターテイメントに昇華させている。

 結果、特殊な世界ではなく誰もが観戦、視聴するプロスポーツに発展を遂げた。

 UFCの2021年の収益は9億3000万ドル、純利益は5億ドル以上といわれている。

 そんな天文学的な数字はピンとくるものではないが、米国ではUFCのみならずPFLまでがESPNで中継されており、サブスクのESPN+の目玉コンテンツは間違いなくMMAだ。

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photograph by Manabu Takashima

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