山田哲人が今、何より欲しいもの。それは「ゴールデン・グラブ賞」だという。
「今年獲れたら、めちゃくちゃ嬉しい。うん。もしかしたらどのタイトルより嬉しいんじゃないかな」
2月、沖縄・浦添キャンプの陽射しに焼けた肌を光らせ、熱っぽく訴えた。
「ここ数年、お前のプレーいいぞ、って褒められるんですよ。監督からもコーチからも。すごく嬉しいんですけど、“物”として欲しい。頑張った証として。世間からも認められたいんです」
日本プロ野球史上ただ一人「トリプルスリー」を3度達成し、本塁打王、最多安打、盗塁王、ベストナイン、MVPなど、あらゆるタイトルを手にしてきた。昨シーズンはそのコレクションに、主将として率いたチームの20年ぶりの日本一と、野球日本代表として東京五輪で獲得した金メダルまで加えてみせた。
球界を代表する天才打者が、喉から手がでるほど欲しがる「守備」のタイトル。その前には、いつも高すぎる壁が立ちはだかってきた。セ・リーグの二塁手部門で、昨シーズンまで9年連続9度も受賞している広島の菊池涼介だ。守備範囲の広さや正確無比なプレーはもちろん、ダイビングキャッチなどビッグプレーでも魅せる。現場取材5年以上の記者による投票で決まるゴールデン・グラブ賞レースで、山田はここ数年、常に後塵を拝してきた。
「(東京五輪の)代表期間中は、一緒にノックを受けたり、近くでじっくり見ていました。菊池さんはプレーが柔らかいし、いつもリラックスしている。自信があるからこそ、力を抜いてプレーできるんだなと思う。僕が勝てるところ? パッと思い浮かばない。身長くらいじゃない(笑)」
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