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[連覇への極秘戦略]女子パシュート「連結か、交代か」

2022/02/05
昨年12月のW杯第4戦は(左から)菜那、佐藤、美帆で臨み2位に
高度な技術の集積とチームワークの結晶で獲得した金メダルから4年。世界的パンデミックで国際舞台が限定されるなか、その戦況は混沌としてきた。王国オランダ、台頭するカナダ。前回覇者の日本の秘策とは、果たして――。

 一糸乱れぬ美しい隊列と、匠の技を感じさせるスムーズな先頭交代で金メダルを獲得した平昌五輪から4年。スピードスケート女子チームパシュート勢が、連覇へ向けて「極秘作戦」を練っている。メンバーは不動のエース高木美帆、姉の高木菜那、佐藤綾乃と、2014年ソチ五輪以来のチームパシュート代表返り咲きとなった押切美沙紀の4人。五輪本番では1回戦、準決勝、決勝のレース毎に出場する3選手を決めてチームを組み、4人が一丸となって2度目の頂点を目指す。

 チームパシュートは平昌五輪以降に様々な変化があった種目だ。まずルール。安全性の向上を目的に'19-'20シーズンからヘルメット着用が義務づけられたほか、レーシングスーツも厚手で伸縮性の低い素材に規格が変更された。日本はこれに素早く対応しつつ、選手それぞれが個人種目でも実力を伸ばすなど、常に進化を見せていた。その象徴が'20年2月の世界距離別選手権(ソルトレイクシティー)。日本はヘルメット着用によって空気抵抗が大きくなったにもかかわらず2分50秒76の世界記録を出し、五輪を含めた主要大会で3連覇を果たした。

 ところが世界のライバルたちは黙っていなかった。戦況に異変が起きたのは'20-'21シーズン。コロナ禍で日本が国際大会への派遣を見送る中、欧米勢がオランダに集結して敢行したワールドカップ(W杯)や世界選手権でのことだ。3人が連結車両のようにぴったりとくっつき、後ろの選手が前の選手の腰を手で押しながら先頭交代を行なわずに滑り、好タイムを出すチームが続出したのだ。先頭交代を繰り返すことで空気抵抗による疲労を分散するという常識を覆す「プッシュ作戦」の誕生だった。

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photograph by Getty Images

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