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[戦うシンデレラ物語]RENA×浅倉カンナ「女王の孤独と祝祭」

2022/08/27
(左から)浅倉カンナ、RENA
辛い現実の突破口となったのは、格闘技との出会いだった。「女子高生ファイター」として10代でプロとなり、RIZINでの激闘により女子格闘技をメジャーな存在へ引き上げた2人が、リング上の喜びと葛藤を明かす。

 孤独な時間を埋めてくれるのは、VHSテープに録り溜めた『クレヨンしんちゃん』。友達はシルバニアファミリーの人形たち。後に“ツヨカワクイーン”と呼ばれるRENAは、小学6年生の頃まで自宅に引き籠っていた。地元で名が知れるほどヤンチャだった姉たちと衝突するたびに、トイレへ逃げ込んだ。

「あ、泣くで。またトイレに籠るで」

 これが家族の口癖だった。両親の離婚なども重なって小学3年の頃から学校へ行かなくなり、無気力で、社交性もなくなった。ただ、12歳ながらに危機感を抱いていた。

「勉強もできない、得意なこともない。この先、私はどうやって生きていくんだろうって、漠然と考えていたんです」

 ある日、近所に見慣れぬ看板を見つけた。

「格闘技スクール シュートボクシング」

 ジュニアクラスもあるらしい。ここに行けば強くなれる。防戦一方だった姉たちにも、仕返しができる。普段はめったに自己主張しないRENAが、母に懇願した。

 当初は「そんなところに通うぐらいなら学校に行きなさい」と反対していた母も、3カ月に及ぶ交渉の末に根負けした。人見知りの少女は、母の膝の後ろに隠れながらも、自室を抜け出して格闘技の扉を開いた。

「最初はパンチもキックも当たらない。それで負けず嫌いの火がついて、楽しくなって。ジムの空気も好きでした。『今日、学校行ったよ』と報告すると大人たちが褒めてくれる。学校以外に軸ができたことで生活が変わりました。敬語は一切使えなかったのでたくさん怒られましたけどね(笑)」

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photograph by Wataru Sato

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