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[涙のメダル第1号]渡名喜風南「負けを知る者の強さ」

2021/07/30
高校、大学、社会人と、負けを知り、強みにしてきた。ようやく辿り着いた五輪の舞台でも着実に勝ち上がった。優位に立つ決勝の最終盤、彼女が直面したものとは――。

「たくさん負けを知っているから負けに強い。自分を信じて次はできるという気持ちを持てるのが彼女の一番の強みですね」

 高校時代の恩師、宮田(旧姓北田)佳世が言う特長が、渡名喜風南という柔道家の歩みをよく表している。

 小さな頃から飛び抜けた選手ではなかった。相原中の先輩の中村美里、同学年の近藤亜美、過去のメダリストたちのように高校時代から国際大会などで活躍したわけではない。そんな渡名喜に宮田は無理に勝つことを求めなかった。宮田自身、'00年代に谷亮子と日本代表の座を争ったトップ選手で、谷に代わって出場した'05年の世界選手権で勝利に囚われすぎて2回戦敗退。そこから不調に陥って、引退するまで立ち直れなかった経験があったからだった。

 そんな師の教えもあり、渡名喜は高校、大学、社会人と少しずつ力を伸ばしていく。うさぎと亀で言えば後者かもしれないが、前回五輪代表の近藤らを上回って辿り着いたのが東京五輪だった。

「相手にとっては脅威ですよ。じわじわこられるから。地味ですけどね」(宮田)

 準決勝で対戦したダリア・ビロディド(ウクライナ)に対しても亀の歩みで追いついた。モデルもこなす20歳のビロディドは'18、'19年の世界選手権決勝で敗れた因縁の相手。172cmとこの階級では規格外の長身だけに、渡名喜は22cmの身長差を崩せずに初対戦から4連敗を喫した。しかし、今年1月についに初勝利を挙げると、五輪での再戦でも亀はうさぎに先んじた。

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photograph by KYODO

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