陸上競技の歴史上で、偉大な世界記録はいくつかあるが、棒高跳びにおけるセルゲイ・ブブカの世界記録は、長い年月、破られなかっただけではなく、本人が記録を塗り替えた回数まで含めて、歴史に残るものであったと言える。1994年に達成した6m14は、2014年にルノー・ラビレニが6m16を記録したことで、破られていたことは事実だった。ただ、ラビレニの記録は屋内の大会で跳んだもので、ブブカの記録は屋外で出したものだったから、ブブカの記録の価値は、なお評価されていたと言える。
棒高跳びの世界記録が、屋内の記録であれ屋外の記録であれ、公認の世界記録として認められることになったのは'98年のことだった。ブブカが記録を出していた時代は、世界記録は屋外での記録を意味していて、屋内で出した記録は屋内の記録として違うカテゴリーに分類されていた。棒高跳びの場合、風が吹くと、助走でポールを保持しにくくなったり、踏み切ったあとの空中動作が影響を受けたりといったことが考えられるから、屋外のほうが記録は出にくいと言える。天候の影響がない屋内の記録が違うカテゴリーで扱われてきたことは、ある程度、理由のあることだったわけだ。
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