目を疑う完敗劇から9カ月。圧倒的不利と言われるリマッチでブラントに2回2分34秒TKOの完璧なリベンジを果たした。ほぼ引退を決意しかけた敗戦から、いかにモチベーションを取り戻し、いかに新たなスタイルを作り上げたのか。「闘う哲学者」が265日間の軌跡を改めて振り返った。(Number983号掲載)
生傷の勲章を土産に、大阪から急いで帰京しなければならなかった。
ロブ・ブラントとのリマッチを2ラウンドで制して世界王座に返り咲いた翌日、村田諒太はボクシングの熱気が充満する後楽園ホールに足を運んでいた。母校の応援をするために。
大詰めを迎えた関東大学ボクシングリーグ。6連覇に王手を懸けていた絶対王者の日大が敗れ、追い掛ける東洋大がわずか勝ち点1差で上回って優勝した。学生時代にもコーチ時代にも経験したことのない初めての栄冠を心の底から喜んだ。
前夜の快事と後輩たちが起こした快挙が、彼のなかで自然と重なった。
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photograph by Shigeyoshi Ohi