本書の発表は1973年。英字新聞に『白鯨』を真似た書き出しと結びを持つ野球小説、という紹介評が載った。『白鯨』が好きなので読みたかったが、洋書店で原書を覗き難解さにあきらめた。数年後、原題『偉大なるアメリカ小説』は『素晴らしいアメリカ野球』として訳出された。読んだ印象は、「怪書、奇書」だ。
ナショナル、アメリカンの2リーグで構成される大リーグに、実は「愛国リーグ」というもう1つのリーグがあった。その第3のリーグが球史から抹殺された顛末を描く。一級の作家の想像力と筆力が生んだもう1つの大リーグ史。様々な球団、オーナー、選手、審判の“とんでもエピソード”が入り乱れる野球のごった煮だ。差別的な言葉も散見する笑い話がダークなのは、作品が書かれたベトナム戦争時代の影なのだろう。
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