「パオロ・サルピ通り――ミラノの中華街は世界中のどんな中華街とも似ていない」
こんな具合に、冒頭付近でこの物語の舞台となる街の説明がある。
ファッションの街・ミラノは、主に'90年代以降、産業を下支えする中華系移民が街の一角を占めるようになった。ここは新興のチャイナタウン。店舗も中華料理店ではなく服飾、アクセサリーが中心だという。イタリアにおける華僑は、移民として多数派ではないが、資本力と組織力で凌駕する。そして、この街をファッションとともに有名にしているのは、“カルチョ”である。
中華街とカルチョ、馳星周という著者の背景と照らし合わせ、完璧な組み合わせだ。このマッチングが、どこで発火するのか。台湾系、上海系らが入り混じって繰り広げられる裏組織の殺し屋たちの抗争。その裏に控えているのは、カルチョの闇の部分である賭博に関わる組織である。中華街とカルチョの融合はサッカー賭博という燃料で爆発する。
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photograph by Sports Graphic Number