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馬を愛する著者がいざなう調べ、考え、味わう競馬。~英国競馬史に残るロマンチックな名馬誕生秘話~

2016/07/10

「競馬学」とあるが、「学問」の本ではない。「馬券必勝法」とも無縁だ。競馬のすべてを愛する著者が、その深く、広い知識を縦横に駆使して、人間が作った“最高の芸術品サラブレッド”と人とが織りなす万華鏡のような豊かな世界に読者をいざなうエッセイ集だ。


 今年のダービーをマカヒキで制した川田将雅騎手はテレビのインタビューで「みっともない恰好をした」と苦笑した。必死の追い出しで頭が上下に揺れた騎乗フォームの乱れ。騎手がこだわる腰を浮かせ低い前傾姿勢で、馬の頸の付け根に取り付くモンキー乗りを本書は、“「枝の上の猿」による革命”として説き明かす。米国の騎手トッド・スローンが調教中に暴走した馬を御そうと鞍から腰をあげ馬の頸にしがみついた。すると馬は気持ちよさそうに走りだした。馬の背に跨るより、手綱も鐙も短くし、枝の上の猿のように頸の付け根に乗るほうが馬は走りやすいのだ。スローンはこの騎乗法で勝ちまくり、それが世界に広まった。1890年代末のこと。著者は、「人間の欲望とサラブレッドの意思」のバランスをとる革命的な騎乗法の発見、と語る。

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photograph by Sports Graphic Number

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