「餅をチンする時に、砂糖を餅の下にしくと、お皿にこびりつかないんすよ!」
インタビュー中、訥々(とつとつ)と話していた石川祐希が唯一、声を張ったのが、中学生時代のこの大発見を語る時だった。端正な顔をくしゃくしゃにして自慢げに話す姿は、少年に戻ったかのように無邪気だ。
コート上でも見せる無垢な笑顔と、世界レベルのプレーとのギャップが、今、女子の心をわし掴みにしている。昨秋の関東大学リーグ戦には、前代未聞の約2000人が詰めかけ、女性誌からも取材が殺到した。
日本男子バレー界に現れた救世主。しかし、喧噪の中にあっても、石川は驚くほど変わらない。
「プレッシャーとかはあんまり感じないですね。というか、何をプレッシャーっていうのかも、あんまりよくわからないので」
星城高校で2年連続高校三冠(インターハイ、国体、春の高校バレー)という伝説を作り、2014年に18歳で全日本デビュー。その後、イタリア・セリエAの強豪モデナに短期留学した。世界レベルに触れ、海外の選手の固定観念にとらわれないプレーに刺激を受けた石川は、急速に成長スピードを上げた。
「今年は、若く、今後中心になっていくべき選手を前に出しながら戦う」
昨年4月、全日本の南部正司監督は、石川を軸とするチーム作りをしていくと明言した。そして、石川ら4人の若手選手を「NEXT4」と命名して売り出した。
プレーも、人気も。低迷する日本男子バレーの命運を細身の19歳に背負わせるのはあまりに酷に思えたが、石川はそんな期待も重圧もどこ吹く風。浮かれることもなければ、プレッシャーに押しつぶされることもない。決まってこう言った。
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