第74代菊花賞馬の栄誉に輝いたエピファネイア(牡3歳、栗東・角居勝彦厩舎、父シンボリクリスエス、母シーザリオ)が、やけに控えめなウイニングランからスタンド前に戻ってきた。ムチを一発も入れられることなく5馬身差の楽勝劇を演じたとはいえ、不良まで悪化した3000mを力走した馬に余計な仕事はさせられないという福永祐一騎手の配慮がそうさせたに違いない。
敗退した他馬と同様に2コーナー過ぎまで流してゆっくりと馬を止め、弾けるような笑顔で待ってくれているはずの角居調教師ら厩舎のスタッフがいる場所に向けて淡々ときびすを返す。派手なガッツポーズを作ることもなかったが、悲願を成し遂げた鞍上の心情はファンにも容易に想像がつく。だからこそ、馬場の出口で一瞬だけ動きを止めた福永&エピファネイアに、そのときを待ち構えていたような祝福の声援が大きな渦となって京都競馬場の曇天に轟いたのだ。
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photograph by Yuji Takahashi