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メジャー生活12年目にして初めて迎えた日本での開幕戦。
「まさに特別な日」に、5打数4安打1打点の大活躍で
チームの勝利に貢献した彼の想いは、言葉よりも雄弁な
プレーと仕草、そしてある“衝撃的な変化”に現れていた。
「まさに特別な日」に、5打数4安打1打点の大活躍で
チームの勝利に貢献した彼の想いは、言葉よりも雄弁な
プレーと仕草、そしてある“衝撃的な変化”に現れていた。
とうとう最後まで、直に肉声を届けることはなかった。イチローは、開幕前の記者会見も、練習後のテレビカメラによる取材も、開幕戦が終わったあとのヒーローインタビューも一切、受けることはなかった。彼は日本のファンの前で、一言も言葉を発していない。
にもかかわらず、いったいなぜ彼の想いはこれほどまでにファンのもとへ届いたという実感があるのだろう。日本でのイチローのプレーは、じつに雄弁だった。
喝采の中、打席に立つ。
バットを高々と掲げる。
360度からのフラッシュを浴びる。
彼の立ち居振る舞い、そのすべてがメッセージだった。日本人は、イチローのプレーを見て、そのメッセージを感じ取ろうとした。
開幕戦に勝った瞬間、イチローはグラブをポンと叩き、ライトスタンドを指差した。それは、シアトルでは見た覚えのない仕草だった。試合後、『シアトルではなかなかないと思うけど……』と問いかけた瞬間、イチローは、なかなか、という言葉に反応して、すかさずこう言った。
「なかなかじゃない、絶対、ないでしょ」
勇気を与えるとか、感動を与えるとか……それは目的にはできない。
そう、アメリカでは絶対にしないことを、日本でのイチローはしたのだ。さらに、その心を訊ねると、イチローはこう言った。
「もう一生で2試合しかないと思ってますから……ここで、こういう形で(試合を)やることは、この2試合しかない。それが過ぎたときには、間違いなく、あっという間だったというものになるので、その瞬間を刻みたいという想いだったし、ここに足を運んでくれた人もおそらくそうだったと思います。それを共有したかったということです」
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photograph by Naoya Sanuki