熊本県の荒尾競馬が昨年末の開催を最後に83年の歴史を閉じた。バックストレッチの向こう側にキラキラ光る有明海が広がる風光明媚なロケーションで知られる、文字通りのローカルな競馬場。長きに渡って地域の経済に貢献してきたというのに、赤字に転落するとその途端にお荷物扱いされてしまうのは、公営競技の宿命なのだろう。
実は荒尾競馬は、賞金や出走手当てなどを極限まで引き下げ、2010年度の収支を13年ぶりに黒字に転化させている。しかし、それは産業として成り立つ構造ではなかった。1着賞金はほとんどのレースで僅かに10万円。勝利という最高の結果を出したとしても、馬主8万円、調教師1万円、騎手、厩務員が5000円という収入しか得られないのでは、誰も幸せになんかなれはしない。馬主が荒尾に馬を預ける意味をなくしてしまったことで土台が崩れてしまい、主催者(熊本県と荒尾市)から廃止を宣言されるより先に、内部から壊れていったというのが今回の悲劇の真相のようだ。
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photograph by KYODO