トロフィーだけでは収まらない。なでしこジャパンの中核として、
苦しくてもあきらめない戦いで、日本人に誇りと勇気を取り戻させてくれた。
ナンバーMVP賞を贈るとともに、彼女にとっての2011年を振り返ってもらう。
人々は、なでしこジャパンに熱狂した。
2011年7月、サッカー女子ワールドカップ。勇ましきなでしこたちは準々決勝で大会3連覇を狙う開催国ドイツを延長戦の末に打ち破り、決勝では過去24度戦って一度も勝ったことのない世界ランク1位アメリカをPK戦に持ち込んで下した。奇跡の優勝――。東日本大震災によって深く傷ついた日本に飛び込んできた明るいニュースだった。
人々は、澤穂希に熱狂した。
苦しい時間帯になればこそ、彼女は先頭に立ってもうひと踏ん張りのネジを巻いた。ドイツを沈めたスルーパス、アメリカの優勝を残り3分で食い止めた同点弾……背番号10はドイツの地に逞しく咲き誇るなでしこの象徴であり続けた。人々は苦境から立ち上がろうとする日本の姿を、きっとこの澤に重ねたに違いなかった。
みんながひとつになったあの熱い夏の日々。澤穂希が今、振り返る――。
ニアへの速くて低いボールに対しては私も多少の自信がありました。
――まずW杯のことをパッと思い起こしてもらうと、どんなシーンが頭のなかに浮かんできますか?
「ひとつはPK戦に勝って優勝が決まってみんなでワーッと一斉に走り出したとき。120分間、あれだけ走ったのにダッシュできましたから。優勝して気持ちいいというのもあったし、もううれしくて(笑)。それと、アメリカ戦のゴールですかね。コーナーキックからのボールを右足で当てて、そのまま転んだら歓声が凄くて。パッと見たらゴールに入っていて、すぐ興奮がこみ上げてきました」
――あのときは1-2のスコア、残り時間3分という状況でした。左コーナーキックからのボールをニアに入って右足アウトサイドで合わせましたけど、どの部位で?
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