#745
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フィル・ジャクソンの究極スター操縦法。~ジョーダン&コービーを育てた男~

ブルズ帝国、レイカーズ黄金時代を築き上げた辣腕指揮官は、唯我独尊のスター選手をいかにしてチームプレーへと導いたのか。
時には心理学者や禅師にもなる、そのコーチング術の深奥に迫る。

 フィル・ジャクソンはNBA史上に残る名将なのだろうか。それとも、単に運と選手に恵まれたコーチなのだろうか。

 NBAヘッドコーチ歴18年で優勝はNBA史上最多の10回、試合の勝率もNBA史上最高の7割と、その実績は文句のつけようもない(2009年12月21日現在レギュラーシーズン1063勝439敗、プレイオフ209勝91敗)。しかし世の中には、そんなジャクソンの実績に対して「スーパースターに恵まれて、運がよかっただけ」と言う人もいる。

マイケル・ジョーダン 1984年ブルズに入団し、2度のファイナル3連覇に貢献。2度の引退、復帰を経て、'03年引退。数々の記録を打ちたて“God”“Air”と称された

 確かに、これまでジャクソンが率いてきたチームをみると、シカゴ・ブルズにマイケル・ジョーダンやスコティ・ピッペン、デニス・ロッドマン、ロサンゼルス・レイカーズにシャキール・オニール、コービー・ブライアント、パウ・ガソルなど、常にリーグ随一のスーパースターたちがいた。しかもほとんどの場合、複数のスーパースターが揃っているチームだった。

 とはいえ、「運がいい」だけでこれだけの実績をあげることができるのだろうか。スーパースターがいるチームをコーチすることは、それほど簡単なことなのだろうか。

「簡単なことではない」とジャクソンは言う。

 強いチームを作るためには、チーム全員の力が必要になる。しかし能力が高い選手は自尊心が高く、チームの概念に収まりきらないことが多い。チームで戦うことと、スーパースターの能力を生かすことを両立させるのは、口で言うほど簡単なことではないのだ。

 実際のところ、ジョーダンもピッペンも、オニールもブライアントもガソルも、ジャクソンがヘッドコーチになるまで優勝したことがなかった。スーパースターがいれば必ずしも勝てるわけではない。

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photograph by Yukihito Taguchi

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