ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER

「こんだけやっても無理か」敗者・那須川天心にあった“3つの誤算”…なぜジャッジは井上拓真を支持したのか? 勝敗を分けた「ダウン後の“2分30秒”」 

text by

渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

PROFILE

photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2026/09/28 17:10

「こんだけやっても無理か」敗者・那須川天心にあった“3つの誤算”…なぜジャッジは井上拓真を支持したのか? 勝敗を分けた「ダウン後の“2分30秒”」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

WBC世界バンタム級王者・井上拓真との再戦に敗れた那須川天心。7回にダウンを奪うも、ジャッジは3者ともに拓真を支持した

 那須川が明らかに劣勢のシーンは決して多くはなかった。一方で那須川がはっきりと優勢だと断言できるようなラウンドもほとんどなかった。スコアシートをチェックすると、3ジャッジの支持をそろえたラウンドは拓真が6つに対し、那須川はダウンを奪った7ラウンドの1つしかない。

 やはり拓真の巧さが一枚上だったということだろう。明らかなクリーンヒットがなくても、前に出て距離をつぶして連打を見舞ったり、相手が打ち気だと見て取るや下がってカウンターを打ちこんだり、ラウンド中でもボクシングの組み立ては実に巧みだった。そうした細かい積み重ねが、拓真のポイント獲得につながり、微妙なラウンドでも拓真にポイントが流れた要因となったに違いない。

同じ相手に2連敗…それでも証明した実力

 那須川は同じ相手に2度負けた。キックボクシングで無敗の戦績を誇り、大きな注目を集める中、ボクシングに殴り込みをかけて3年あまり。那須川は「次がどうこうとか考えられない」と憮然とした表情で語った。

ADVERTISEMENT

 確かに那須川のキャリアにおいて短期間での2敗は痛い。ただ、本人の「成長した姿は見せられたと思う」とのセリフは説得力を感じさせた。スピードや間合いの取り方、ステップワークは相変わらず非凡で、繰り出すパンチもこれまで見たことのないような鋭さがあった。接近戦も上達していた。何より負けないボクシングをさせたらピカイチの拓真に対し、これだけの試合をしたことが那須川の実力を物語っている。

 格闘技の申し子と呼ばれるファイターはまだ28歳、プロボクシングは10戦しか経験していない。本人は試合直後、「こんだけやっても無理か」と口にしたが、キャリア3年にしてだれよりも中身の濃い経験を積んだ上に、まだまだ伸びしろがあるのだ。那須川が今後、この敗北から採点の難しさを含めて何を学び、どんなボクサーになっていくのか。ぜひこの先を見たいと感じさせる一戦だった。

関連記事

チェックを入れてボタンを押すだけ
Google検索
Number Webを見つけやすくする
BACK 1 2 3 4
#井上拓真
#那須川天心
#葛西裕一
#浜田剛史
#井上真吾
#井上尚弥

ボクシングの前後の記事

ページトップ