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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
六大学野球“バットフリップ事件”で小宮山悟監督が「次の試合はベンチから外す」“喝”のワケは?「自分を祝福していいのはプロだけでしょう」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAsami Enomoto
posted2026/09/17 17:29
早大の1年生・川尻結大の「バットフリップ」に苦言を呈した小宮山悟監督。その言葉の真意はどこにあった?
空中に投げ上げられたバットは地面に落ちて折れたり、傷ついたりしなかったのか。もしかして、この選手はホームランを打たせてくれたバットを愛せない選手なのか。もしかして、この劇的ホームランが自分とバットの「共同製作」であることを忘れてしまったのか。そう考えると、子どもたちには、絶対マネしてほしくないな。
そして、これは余計なことかもしれないが、もしそういう選手が母校の4番を打っているとしたら「ちょっと悲しいな……」と思ったことを伝えた。
頭に浮かんだ「あるグラブ職人」の言葉
もう10年ほど前のことだ。レジェンドみたいな大ベテランのグラブ職人さんにお話をうかがう機会があった。
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ちょうどナイター中継が始まる時間で、その職人さんが画面を見つめながらこんな話をされていた。
「まだあたしが40ぐらいの頃だったかなぁ」
一人称が「あたし」。生っ粋の江戸っ子かもしれないと思った。
「あるピッチャーが立ち上がりから、たて続けに打たれてね。初回でノックアウトされて、ベンチに戻る時にグローブを思いっきり叩きつけたんだ。『ああっ!』と思った。あたしの作ったグローブですよ。見ればわかるんだ。あたし、ウワーッと思ってね。タクシー乗って後楽園(球場・現東京ドーム)まですっ飛んでいきましたよ。ぶんなぐってやろうと思ってね」
結局、球場の入り口ですったもんだの末、レジェンドの“怒りの鉄拳”は未遂に終わったそうだ。
「プロが使うグローブなんてのはね、牛の革を選ぶところから始まって、丹精込めて、何カ月もかけて育てるんだ」
氏は、確かに「育てる」という表現をされた。
「あたしたちにとっては<子供>ですよ。一つ一つのグローブがね。そのかけがえのない、あんな小さな子供を地面にバーンって叩きつけやがって。ああいうヤツは許せないね。野球選手の風上にも置けねえ」
グラブだって、バットだって、プレーに使う用具は選手にとって、どれもかけがえのない「同志」であり「戦友」であろう。大切にすればするほど、いざというときに強い味方になってくれる。
そんなことは、大学の野球部に来て教わることじゃない。その前のどこかで、とっくの昔に身につけているはずの野球人としての「良識」であろう。
