炎の一筆入魂BACK NUMBER
「130kmで詰まらせるのが気持ちいい」カープ鈴木健矢が理想を捨て、アンダースロー転向で得た果実《転機は新庄監督の言葉》
text by

前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2026/08/31 06:00
広島に移籍後2年目にして、その存在感が高まっている鈴木
役割が先発に変わってもスタイルは変わらない。打者に自分のスイングをさせずゲームメイクの役割をこなしている。登板数を自己最多の28とし(8月31日時点)、8月19日には2年ぶりとなる先発勝利も手にした。昨季まで2年続けてチームが失速した夏場に存在感が増している。
「なくてはならない存在」
新井貴浩監督からはそれほどまでに称賛される投手になった。アンダースローとして成功できた要因を本人に聞くと、自嘲気味に笑った。
ADVERTISEMENT
「プライドを捨てることですよ。変則ピッチャーって正直、なりふり構わなくなったときに踏み込む領域だと思います。才能ある人はオーバー(スロー)のままでいい。それができなくなって、徐々に腕が下がっていく。サイドに変えるときも抵抗がありましたけど、やっぱり(試合で)投げたい。投げられるのであれば、プライドは捨てられます」
マウンドに立ち、戦い続けられるのであれば、投手としてのこだわりなどいらない。それこそが、鈴木の投手としてのプライドなのかもしれない。
130kmで勝負する醍醐味
打者を抑えることだけにフォーカスしているからこそ、変化を恐れない。試合中にプレートの位置を変えることにも躊躇はない。見た目には同じアンダースローでも、細部の変化を加えながら毎年アップデートしている。
「今は詰まらせるのが一番気持ちいいですね。150kmの球を打ち返すようなバッターが130kmで詰まるというのが、僕の投球なんで」
スピードという武器を手放したことで、見えてきた景色がある。アンダースローとして見いだした新たな武器。球速では測れない投手の価値を、マウンドで証明していく。
