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「優勝して…言葉がひとり歩きし始めた」慶応高“エンジョイ・ベースボール”旋風は球界に何を残した?「髪型とかなんでしょうけど…」選手たちのホンネ
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki
posted2026/08/22 11:02
2023年の夏の甲子園で優勝した慶応高。スローガンとして話題になった「エンジョイ・ベースボール」の気風は、高校球界に何を残したのか
丸田、渡辺、そして大村には、考えていることを明瞭に伝える能力が備わっている。表現力が豊かなのだ。エンジョイ・ベースボールは、選手たちの考える力が成立要件と言っていいだろう。大村は高校時代にチームをまとめるにあたり、仲間たちの言葉が豊富だからこそ、苦労したと笑う。
「みんな頭がよくて、考えられる。自分としてはチームを運営するにあたって、こう進めたいというイメージがあっても、必ず議論が生まれて、すんなりはいかない。それなりに気をつかいました(笑)」
ケアしたひとりが、他ならぬ丸田だった。それを丸田本人に話すと、苦笑しながら、こう振り返った。
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「僕にとって森林さんはそれなりに怖い存在だったので、普段から監督と接している大村に、若干無責任に問題提起を投げかけてました(笑)」
渡辺は「大村と、森林さんの相性がよかったんだと思います」と振り返る。
「ふたりの考えていることが近かったんでしょうね。なにより、あの年は森林さんが楽しそうでした」
慶應の選手たちが提示した新しい高校野球。あの優勝によって、何かを残せたのか。大学生になった当事者たちは、どう感じているのだろうか。丸田はいう。
「変化といえば、髪型とかになるんでしょうけど、それは表層的なことですよね。エンジョイ・ベースボールは流行語になりましたけど、大きな流れはそう簡単には変わらないと思います。変化って、急に起きるものじゃなく、ある程度の時間をかけて起きるのかなとも思うんですよね」
「変化を生み出せたかというと…」選手の胸中は?
高校野球が変わることを切望している大村は、こう捉えている。
「なにか変化を生み出せたかというと、変わっていないという現状はあると思います。ただし、高校野球の在り方に疑問を投げかけることはできたかと思います」
慶應の爪痕。あの優勝は、高校野球の変化の源流のひとつになっているように思える。夏の甲子園での酷暑対策など、以前に比べ、高野連の対応はかなり柔軟になった。ただ、大村は現在の流れに慎重な見方をしている。
「高校野球は大人のために存在するのではなく、高校生のためにあると思います。いま、高校野球の7回制が議論されていますよね。でも、高校生の声は届いているのかな、という気もします。おそらく高校生全員が7回で終わるのではなく、9回までプレーしたいと願っているはずです」

