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「今の時代では足りないと思い知らされた」日大三高・小倉全由前監督が徹底した部員数制限、体罰排除…それでも見えなかった“現代の死角”
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/08/19 11:01
日大三高野球部の監督時代の小倉全由氏
――手を上げるのをやめてから、指導方法はどう変わっていったのでしょうか。
小倉 口で厳しく叱ることはあったんです。ただ、叱った選手のことを、そのあと、ずっと目で追うようになりましたね。怖くてね。落ち込んだまま裏山の方に入って行って、何かあったらどうしよう、とか。あと、叱った日は、その日のうちに自分の部屋に呼ぶようにしていました。それで、プリンとか甘いものを食べさせながら「俺が今日怒った意味、わかるか?」って、ちゃんと説明するようにしたんです。そうすると、大抵の子は部屋を出ていくときに明るい表情になる。今の選手たちは怒られ慣れてないんだろうな、叱られるとこちらが思っている以上にグサッときている。その日のうちに笑い合っておかないと、僕の方が怖くて夜眠れなかったんですよ。
冬の合宿が嫌になってきた
――近年は、練習量を課すこと自体に恐怖を覚えるようになったとも言っていましたよね。
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小倉 温暖化の影響で、ランニング中に倒れて亡くなったとかいう事故のニュースが耳に入るようになったじゃないですか。だから、練習で選手を追い込むのが怖くなってしまいました。「まだまだ」というよりも、「ここらへんでいいか」になってしまう。ある程度、やり切らせないと選手たちが達成感を得られないのはわかっているんですけど、それで命に関わるようなことになったら元も子もないじゃないですか。特に冬の強化合宿(朝5時から夜までの練習が2週間続く)は年々、やるのが嫌になっていきましたね。朝5時、全員が揃うまで、心臓がバクバクしてるんですよ。部屋で冷たくなってたらどうしよう、って本気で心配になっちゃう。だから最後の方は選手に頼んでいました。「お前ら、朝だけはちゃんと起きてきてくれ。寝坊されると、俺の心臓が止まりそうになるから」って。
――冬の強化合宿は日大三の名物ですから、そう簡単になくすことはできないですもんね。
小倉 だから、いろいろ対策を立てるようになりました。栄養学の先生に「味噌汁は魔法のスープだ」って教わってからは、朝一番に紙コップに入れた温かい味噌汁を全員に配って、飲ませる。あと、起きてすぐ走るのって、心臓の負担がものすごく大きいらしいんです。なので、まずは雨天練習場でしっかりウォーミングアップをさせて、水分も十分に取らせてからグラウンドに出すようにしました。若い頃は、歳を重ねた監督に対して「理屈っぽいことばっかり言って……」と反発を覚えることも多かったんです。でも、自分がその歳になったら、同じようなことをしていましたね。引き出しが増えていくにつれ、先手先手を打って、事故を防がなきゃって思う。なにせ、選手の命がかかっているわけですから。

