NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「1番がいい仕事をしてくれた」”打者・大谷翔平”に感謝する”投手・大谷翔平”…二刀流で日米史上初の快挙に「全部は勝てる確率を高くするための戦略」
posted2026/07/01 06:01
パドレス戦の1回表に初球を8号ホームラン(右)。投げては5回無失点で4勝目を挙げたドジャース・大谷翔平
text by

石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Yukihito Taguchi
発売中のNumber1145・1146・1147号に掲載の[日米2つの快挙に寄せて]大谷翔平「二刀流で勝つための時間の使い方」より内容を一部抜粋してお届けします。
MLBレギュラーシーズン初の快挙
プレイボールがかかって6秒、大谷翔平のバットがゲームの初球を捉えた。
2026年5月20日、サンディエゴ。
1番、DH、ピッチャーとして1回表のバッターボックスに入った大谷は、パドレスのランディ・バスケスが初球に投じた高め、95.5マイル(約153km)のストレートをバックスクリーンの右へ叩き込んだ。先発ピッチャーによる先頭打者ホームラン――ビジターの“1番、ピッチャー”が1回表の、しかも初球にホームランを打つ。表でなくとも初球でなくとも、これはMLBのレギュラーシーズン初の快挙だ。サンディエゴでの試合後、大谷はこう言った。
ADVERTISEMENT
「一番はピッチャーとして先制点をあげないようにという気持ちで臨んでいたので、その前に1点入って、1番がいい仕事をしてくれたという感じかなと思います」
打者・大谷に感謝する投手・大谷
いい仕事をしてくれた「1番」とは“バッターの大谷”のことで、この試合で「一番」大事な先制点を与えないピッチングを求められたのは“ピッチャーの大谷”のほうだ。大谷は2人いる――最初にそう口にしたのはファイターズの前監督、栗山英樹だった。2012年の秋、花巻東高校の大谷を獲得した直後、栗山はこう言っている。
「今年はドラフト1位を2人獲れたようなもの。ピッチャーの大谷翔平と、バッターの大谷翔平(笑)。2人ともドラフト1位クラスの逸材なんだから、そりゃ、二刀流だってやりたくなるでしょ」
当時、投打ともに大谷の実力が抜きん出ていることは理解できても、「2人いる」ことをイメージするのは難しかった。しかし今やその言葉は完全に市民権を得ている。何しろ大谷自身が、大谷は2人いることを前提に言葉を発しているのだ。先発して勝利投手となった大谷が、先頭打者ホームランを打った1番の大谷に「いい仕事をしてくれた」と感謝する現実――じつはこの快挙、大谷は日本でも成し遂げている。
2016年7月3日の福岡。
1番、ピッチャー、大谷――18歳のときに「先入観は可能を不可能にする」と口にした大谷に喰らいつくかのように、栗山は内なる先入観の打破に挑み続けてきた。大谷がメジャーでプレーするようになってからルールが変わり、一人の選手がDHとピッチャーとして同時に試合へ出場することが可能になった。しかし10年前にそのルールはまだない。だから、今でこそ当たり前となったこの起用法を10年前に思いつくことは至難の業だったのだ。それを栗山が、まずやってのけた。

