炎の一筆入魂BACK NUMBER
「周りは気にせず自分のルーティンを…」カープ代走の切り札・辰見鴻之介が、クルマにも繁華街にも興味を向けず「最高の準備」にこだわる理由
text by

前原淳Jun Maehara
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2026/05/25 18:22
俊足を活かしてダイナミックなプレーを披露する辰見
5月17日の阪神戦では、9回にセーフティーバントで出塁しながら、岩崎優の巧みなけん制に誘い出され、走塁死となった。リーグ上位の成功数だけでなく、失敗もまた辰見の糧となる。
「警戒されて、分析通りにいかないこともある。日々勉強しながらやっています」
そう語る表情には充実感がにじむ。一軍に定着し、これだけ継続して出場機会を得るのは初めての経験。「毎日がすごく幸せです」と素直に言う。
さらなる成長のために
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まだ怖さを知らない大胆さも、辰見の武器なのかもしれない。赤松真人外野守備走塁コーチは、その先にさらなる成長の余地を見ている。
「今は怖さがないからイケイケどんどんで走れるけど、ここ一番の代走で牽制死したり、自分の盗塁死でゲームセットになったりする経験を何度かすると、スタートを切ることが怖くなる。今は思い切ってスタートを切ってスピードに乗れる。そこはもちろんいいところ。でも、怖さを知った上でスタートを切れるようになったら、辰見の本当のすごさが分かると思う」
現役時代、代走として広島の25年ぶりリーグ優勝に貢献した男の言葉には重みがある。成功体験は成長を加速させる。一方で、挫折や失敗こそが人を大きく変える契機にもなる。
赤松コーチの言葉を伝えると、辰見は深くうなずき、うっすらと笑みを浮かべた。
「楽しみと言ったらおかしいですけど、自分のミスで(試合が)終わったときにどんな感情になるんだろう。それをどう乗り越えていくのかと思ったりします。これからもいろんな経験をして、いろんな感情を味わいたいですね。未来のために」
第一印象から変わらない。辰見鴻之介は速い。そして、強い。
