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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「井岡さんにはとても感謝しています」井上拓真が井岡一翔戦後に語った本音…最終ラウンド直前に父・真吾トレーナーにキレた「怒って言わないでくれって」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakashi Shimizu
posted2026/05/22 17:02
井岡一翔とのWBC世界バンタム級タイトルマッチで大差の判定勝ちを収めた井上拓真のインタビュー(後編)
結局14、12、10ポイントの大差3―0判定勝ちで初防衛に成功した。ポイントを失ったのは1、4、11ラウンドにジャッジ1者が「9」をつけたのみ。KOを奪えず、詰めが甘かったという試合ではない。ポイントアウトすると決め、レジェンド相手にほぼ完ぺきにやりきったことこそに、ネオ拓真の凄みがある。
拓真はちょっと意外にも映るエピソードを明かしてくれた。最終12ラウンド前のインターバルで、拓真はセコンドの父に“キレた”そうだ。
「公開採点でポイントをリードしていることも分かっているのに、父は結構怒った感じで指示を出してくるんですよね。そんなふうに言われたらこっちだって焦らなくていいのに焦ってしまう。だから“もう最後のラウンドなんだから、そんなふうに怒って言わないでくれ”って言い返したんです。試合で父に言い返したのって、おそらく初めてじゃないかな」
「あの戦い方ならポイントは取られない」
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真吾トレーナーとしては、リミッターを外さない拓真のケツを叩く意味でボクシングでは敢えて怒り口調で接していたところがあった。でももうそれは必要なかった。言い返されたことを、父は内心喜んだに違いない。「あのタクの戦い方なら相手にポイントは取られない」と試合後、拓真にそう語っている。絶対に気を抜くな、の裏返しの怒り口調も、拓真とすればもう言われなくても分かっている。それゆえのキレたリアクションであった。
拓真は試合を終えると、JBCから許可をもらってドクターチェックより先に尚弥の控室に向かった。グータッチをかわし、「やったぞ。次は頼んだぞ」と伝えてバトンを渡した。
メーンイベントはリングサイドから見守った。「集中しろ、集中しろ」と兄に声を掛けていた。
「1ラウンドにナオの圧力、距離の使い方を見てこのままいけば勝てるぞとは思っていました。あとは集中力、一瞬も気を抜かないようにって、もうそれだけでしたよね」
「井上尚弥の弟じゃなく、井上拓真を…」
尚弥も中谷潤人との無敗対決を3-0判定で制し、兄弟ともに大きなインパクトを残して勝利を手にした。2人に多くの言葉は要らなかったという。

