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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「井岡さんになら負けても…」井上拓真がいま明かすレジェンド・井岡一翔とのタイトル戦 “誰にも言っていない”衝撃の真相「勝負は自分のなかで5分5分だと」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakashi Shimizu
posted2026/05/22 17:01
井岡一翔とのWBC世界バンタム級タイトルマッチで大差の判定勝ちを収めた井上拓真のインタビュー(前編)
「井岡さんは自分が高校のときから世界チャンピオンで雲の上の存在。日本のボクシング界を引っ張ってきたレジェンドです。恒成にも勝っているし、映像では分からないうまさがあるんですよね。練習から気を抜けなかったし、自分がチャンピオンであっても井岡さんに挑むという気持ちでいました。天心選手のときは“踏み台なんかにされない”“なめんなよ”みたいな思いが強かったけど、井岡さんには“負けても仕方ない”くらいの感情でした。勝負は自分のなかでフィフティフィフティだと。当然リスペクトしているし、誰もが認める偉業を成し遂げている人ですから」
負けても仕方ない――。
その言葉は、弱気の類ではまったくない。敵意でもライバル心でもなく、リスペクトする相手に無心で向かっていく達観がさらに一歩、拓真を高みに導いていた。
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ジャブの差し合いから始まった1ラウンド。拓真は速いジャブを駆使しつつ、常に頭の位置、ポジションを移動して井岡をけん制する。終盤にはポイントをきちんと自分のものにすべく、ワンツーを繰り出している。井岡のプレスを受けてロープ際に詰められても、被弾なく潜り抜けた。冷静に3分間をコントロールしていたものの、実は警戒心をマックスに引き上げなければならないシーンもあった。
「(自分の左に対して)内側から右を合わしてきたんですよね。コツンというくらいのパンチをもらって一瞬自分もバチッと来ている。“うわっ、やっぱタイミングうまいな”と思いましたね。セコンドの父(真吾トレーナー)からは『ジャブで最低五分五分ならいける』と言われていて、ジャブで上回っているいい感触が自分のなかにありました。一瞬効かされたけど、意外といけるなって」
「今のボクシングでいく」決断
ジャブの制空権は我にあり。那須川戦のように前に出て、ジャブで優位に立つ作戦を描いていた。だが足でさばきながらジャブを突いていく1ラウンドのボクシングを続けていくほうが得策だと感じ、1ラウンド終了時のインターバルで自分の考えを父に伝えている。
「パンチをまとめられても見切れて、この展開でいいと思ったので“今のボクシングでいく。足を使ってポイントアウトする”と言いましたね。父的にはロープを背負ってディフェンスしていると(ジャッジの)印象も良くないと思っていたようですけど、自分としては絶対にいけると踏んでいました」
拓真の覚醒ポイントは、まさにここにある。

