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「僕ら世代のスターの井岡に限って…」同じ37歳現役の元世界王者が案じる井岡一翔の“ミス”と“今後”「彼は僕みたいにすぐ『引退』とは言わない(笑)」 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2026/05/11 06:02

「僕ら世代のスターの井岡に限って…」同じ37歳現役の元世界王者が案じる井岡一翔の“ミス”と“今後”「彼は僕みたいにすぐ『引退』とは言わない(笑)」<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

同世代の元世界王者、小國は井岡の戦いぶりに首をかしげたという

 井岡が何の狙いもなく、不用意に振りかぶるようなパンチを打つはずがない。パンチのスピードも、いつもより遅く感じた。頭のなかにクエスチョンマークがいくつも浮かんだ。

「前日計量の体を見たときに今までで一番いいくらいに仕上がっていました。腹筋も割れていたし。ただ、当日の体を見ると、体重をかなり戻している感じでした。増やし過ぎたのかな、と思ったけど、井岡に限って、そんな失敗をするわけがないので」

拓真の力が想定以上だったのか……

 思い返せば、序盤からジャブを被弾していた。映像で見ていても、井上拓真のパンチはモーションがなくて、読めない。「0から100」になるような感覚に近い。井岡が前の手の差し合いで負けるのは、めったに見ない光景だった。

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「拓真のスピード、パワーが想定以上だったのかもしれないです。その誤差が焦りを生んだのか、いろいろと考えながら見ていました」

 井岡がプレスをかけても、井上拓真は巧みに対応していた。得意とする左のボディブローも打たせてもらえなかった。肩を入れてすっと距離をつぶしてくる。3ラウンドにはじわじわと距離を詰めてリードを打つと、カウンターの右アッパーで再びダウンを喫する。序盤の段階でかなり苦しい状況に追い込まれたが、気になったのは3ラウンド以降の戦い方。それまでと同じように前へ出て、プレスを掛け続けていく。ロープ、コーナーに詰めても、同じように体を入れ替えられ、何度も右ストレートを浴びた。

「当初のプランが狂っても、いつもなら立て直すんです。普通の選手は準備してきたことをやり続けますが、井岡は違う。1、2ラウンドで通用しなければ、次の手を打つ。でも、今回は戦い方が変わらんかった。効いたフリして下がるとか、いろいろやり方はあったと思うのに……。きっと何かを考えていたと思うのですが、それが分からなかった。本来はじわじわと相手を追い詰めていく将棋のようなボクシングをして、最後に『王手』をかけるんですけど」

【次ページ】 井岡は僕と違う次元のボクシングをする

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