ボクシングPRESSBACK NUMBER
「イノウエに判定勝ちする」敗者・中谷潤人の“意外なプラン”はどこで狂ったのか…「なぜ急に問題になるんだ?」前日計量でトレーナーが井上尚弥陣営に見せた“不信感”
text by

NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/05/09 11:04
12ラウンドの死闘となった井上尚弥vs中谷潤人。中谷陣営が語った“2つの誤算”とは?
「この試合は100パーセント、壮絶な打撃戦になる。井上選手が仕掛けてくるすべてを乗り越えた末に、僕は判定で勝つと思っている」
ここで中谷が語っていたのは、早い回で井上を倒すというシナリオではない。そして左の一発で試合を終わらせるという話でもない。
井上が出してくるものを受け止め、乗り越え、最後に判定で勝つ。つまり中谷本人の想定もまた、長い時間をかけて井上を崩す持久戦だったのだ。それは戦前に日本のメディアで予想されていた「中谷が勝つならKOしかない」という見方とは全く異なるものだった。
ADVERTISEMENT
ではそのプランに誤算があったとすれば、それはどこなのだろうか。
ルディが怒った「なんで急に問題になるんだ?」
誤算について書く前に、5月1日の前日計量の現場で目撃した“異変”について触れたい。
「なんで急に問題になるんだ?」
後楽園ホールの隅で、ルディは知り合いの記者にそう怒りを露わにした。その直前に行われたルールミーティングで、中谷のバンデージの巻き方をめぐって、井上陣営側とやり取りがあったようだった。
「私は日本で30年以上やってきた。それなのになぜ今になって、何ができて何ができないかを私に言うんだ」
そして「ふざけるな」とミーティングの場で怒った、とルディは振り返っている(米ボクシング系YouTubeチャンネル「Little Giant Boxing」)。
その後、観客を入れて公開計量が始まったとき、ルディは井上陣営が登場する際に「ウー」と不満の声を上げていた。ここまで日本メディアには見せなかった、感情を露わにしているルディの姿だった。
「あのとき私はファイトモードになったんだ。戦う人間になった」
ただし、試合後のルディは「Little Giant Boxing」で「(バンデージ問題は)最終的にすべて解決した」と振り返り、「そこに言い訳はない」と強調している。
◆
では中谷陣営、その戦術にあった誤算とは何だったのか?
その誤算を考えるうえで重要な音声がある。それは試合の配信で声が拾われていた、ルディの2つの指示である。
ひとつは7ラウンド終了後、もうひとつは10ラウンド終了後だ。
7ラウンド終了後、中谷のコーナーでルディの声が響いた。
「もっと積極的に行け。分かるか。もっと手を出し始めるんだ」
そしてこのあと、ルディは井上攻略の核心ともいえる言葉を続けた――。

