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那須川天心が敗者エストラーダの手を掲げ…記者の驚き「こんな姿は初めて」いったい何が変わった?「ずっと怒られていた」崖っぷちから“生還”するまで
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布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2026/04/18 17:02
再起戦で“変貌”を遂げた那須川天心。元2階級制覇王者のエストラーダに9回終了時TKOで完勝した
じつは短期決戦型だが…霧散した“2ラウンドの壁”
個人的には“2ラウンドの壁”に注目していた。もともと天心は短期決着を得意とする傾向があり、キックボクサー時代には2ラウンド以内で20以上のKOを記録している。現在のキックは3ラウンド制が大半なので短期決着を狙う選手が主流を占めるが、天心の場合それが顕著だった。
ボクシングでは6回戦でデビューをしたため、最初からキック時代の倍のラウンド数で闘っていたことになる。その後は当たり前のように10回戦を闘い抜いていたので、そもそも“スプリンター気質”であるとこをすっかり忘れていた。
久しぶりにそれを思い出したのが、先の井上拓真戦だった。天心は2ラウンドまで優位に進めながら、3ラウンド以降はペースもリズムも拓真に奪われる形でズルズルと試合を支配されてしまったのだ。
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今回、エストラーダは1ラウンドから動きがよく、左ジャブやボディで攻め込んできた。それに対し天心が左ボディフック一発でエストラーダをロープ際まで吹っ飛ばすと、クリーンヒットではなかったものの、場内はドッと沸いた。
3階級制覇を狙うエストラーダにとって、今回はバンタム級に転向しての2戦目。試合前から「両者には体のフレームの違いがあるのでは?」という指摘があったが、リング上の現実がそれを物語っていた。スピードとパワーの差によって、危惧していた“2ラウンドの壁”は霧散した。
4ラウンドの公開採点にも動じず
だが、もうひとつ壁があった。拓真戦と同様に今回もWBCルールが適用されたため、4ラウンドと8ラウンド終了時にそこまでのポイントが読み上げられるオープンスコアリングシステムが採用されていた。前回はリードされていると想定していた拓真陣営が4ラウンド終了時点のイーブンというスコアに胸を撫で下ろし、その後じわじわと天心の攻略に成功した。
今回も筆者の採点では天心がリードしていたが、4ラウンド時点で39-37と天心につけていたのは1者のみで、他の2者は38-38のイーブンだった。「ここから拓真戦のときと同じ流れになるのでは?」と考えられなくもなかったが、それもまた杞憂に終わった。

