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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「背中まで振動が…これまでのボディと全く違う」那須川天心が元2階級王者にTKO勝利…「井上拓真との再戦が実現したら?」元世界王者・飯田覚士の見解
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byHiroaki Finito Yamaguchi
posted2026/04/16 17:17
WBC世界バンタム級挑戦者決定戦・那須川天心vs.エストラーダの勝負を分けたポイントとは…元世界王者の飯田覚士氏が徹底解説した(後編)
「スローの映像で見ると、背中まで振動が来ていて一度硬直したようなリアクションも確実に効いていた証です。ここからエストラーダ選手の右が伸びなくなっていくのは、やっぱりボディにダメージがあるから。天心選手のこの日のボディ打ちは、これまでとまったく違っていました。以前までは相手のパンチをもらわない打ち方でしたが、今回は効かせる、攻めるための打ち方。右をもらうリスクがあっても相打ち上等、おでこでもらえばいいみたいな感じでした。そして前に行く勢いがプラスされていたので拳に力が乗っていました」
エストラーダ「あの精神力はさすが」
流れは一気に那須川に傾いていく。ボディばかり狙わず、上にも散らして冷静に着実に、エストラーダの動きを鈍らせていこうとする。7ラウンドには右アッパーであごを突き上げている。それでもエストラーダは反撃すべく前に出ていこうとした。ローマン・ゴンサレスとの激闘でも知られる元2階級制覇王者は、35歳とはいえ海千山千の猛者。2年前にはジェシー“バム”ロドリゲスにKO負けを喫しながらも、1度ダウンを奪うなどタフなファイトには定評がある。簡単に引き下がるようなボクサーではない。
「あの精神力はさすがだと思いましたね。8ラウンドが始まると、また力を込めたコンビネーションを見せていきましたから。ポーカーフェイスを貫いて、ダメージがあるのを悟らせない。このとき既に肋骨を痛めていたようですが、ちょっとでもギブアップ(棄権)のことが頭によぎっていたら、あのようなファイトにはならないはず」
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エストラーダの押し通す強気に対して、那須川も上乗せしていく。打たれたら打ち返す、先に手を出していく。そして丁寧かつ鋭い右ジャブを忘れない。8ラウンドまでの公開採点は、ジャッジ3者が2、4、6ポイント差で那須川を支持。5ラウンドで変化をつけて自分のペースに引き込んでから勝負の中盤戦で差をつけた。そして9ラウンドを終えたところでエストラーダが棄権を申し出る。不利との前評判を覆しての価値ある完勝であった。パンチ力がないとのこれまでの見方に対しても、「効かせる、攻めるための」一発一発には説得力があった。
天心と拓真のリマッチが実現したら?
負けたら今後のボクシング人生を大きく左右する勝負の一戦にTKO勝ちし、WBC世界バンタム級チャンピオンへの挑戦権を手にした。井上が5.2東京ドームで5階級制覇を懸けて臨む井岡一翔の挑戦を受けるため、その結果次第となるものの、井上へのリベンジしか那須川の頭にはない。

