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「なんか、燃えてますね」侍ジャパン敗戦から3日後、オリックス若月健矢30歳が語ったWBCの本音…戦友・阪神坂本と笑顔のグータッチ「僕もアップデートしないと」
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米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKelly Gavin/WBCI/MLB Photos via Getty Images
posted2026/03/24 11:04
WBCで3試合の先発マスクを被った若月健矢(30歳)。悔しい思いもしたが、高いモチベーションでオリックスに戻ってきた
帰国からわずか2日後にも関わらず、その日は若手選手に混ざって早出で打撃練習を行い、全体練習が始まってからもずっと動き回っていた。捕手の練習を終えると、今度はグラブを持って外野へ駆け出し、守りについた。
「いち早く、やりたい思いはありました」
静かに燃えていた。若月に一番火をつけたのは、優勝したベネズエラの大型捕手、サルバドール・ペレス(35歳)だった。会見中、若月の口から何度もその名が出てきた。
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「ペレスであったり、そういう選手の振る舞いや、能力を見て、(自分は)まだまだだなって本当に痛感しました」
ベネズエラ戦で苦労した点についても、「打線ももちろんなんですけど、ペレスが」と再びペレスの話に。
「何回もタイムをかけてマウンドに行ったり。そういうところもなんか、自分も何かできたんじゃないかなという、不甲斐なさがあります」
確かにペレスがマウンドに行くタイミングは絶妙だった。アメリカとの決勝戦でも、例えば8回裏に、オリックスのアンドレス・マチャドがブライス・ハーパーに同点2ランを打たれた直後。アーロン・ジャッジを1-2と追い込んだところで、ペレスはマチャドに歩み寄り、間を取った。集中力を削がれたのか、その後ジャッジは低めのストライクを見逃して三振に倒れ、ベネズエラは同点で食い止めた。
打席の途中でタイムをかけるタイミングも、ピッチクロックやピッチコムに慣れているかどうかが多分に影響したと思われるが、言い訳にはしない。
もっといい捕手になれる
さらに、構え方やフレーミングについても気づきがあったという。
「ほとんどのメジャーのキャッチャーが、ランナーがいても片膝をついて構えているので、『なんでこういう構えをしているんだ?』と思っていました。でも実際に行って、近くで見てみると、すごく理にかなっていると感じたので、そういうところを勉強したいなと。
片膝をつくと、低めのストライクの球を、きっちりストライクと取ってもらえる。僕はちょっと何球か、際どいところをボールにしてしまったことがあったと思うので、そこをしっかりストライクと言ってもらえるような技術を身につけていきたい」
「力の差を実感した」と若月は何度も口にしたが、それは決して“自分の限界を感じた”という意味ではなく、むしろ逆だ。
自分にはまだまだやれること、やるべきことがある。それができればもっといい捕手になれる。その視界が開けた。
「僕もアップデートしていかないといけないんだなと、痛感させられました」
若月は2021年から23年までオリックスでリーグ3連覇し、山本と3年連続で最優秀バッテリーに輝いた。昨年はゴールデン・グラブとベストナインをダブル受賞。本人は「自分はまだまだ」と決して驕ることなく、謙虚な姿勢を貫いてきたが、実はキャリアを重ねるにつれ、その先の自身の成長の道筋が見えにくくなっていたのではないか。
そんな時にWBCを経験し、衝撃を受けた。力の差を感じると同時に、自分の伸び代もハッキリ見えた。もしかすると若月にとって久しぶりの感覚だったのかもしれない。


