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「えっと…お寿司もティラミスも食べたいです」中井亜美17歳のリアルな素顔…伝説ポーズの真相は「メダルどうかなあ、という気持ちでした」
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野口美惠Yoshie Noguchi
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2026/03/02 17:26
日本のフィギュアで史上最年少のメダリストになった中井亜美(17歳)と銀メダルの坂本花織(25歳)
「急にオリンピックを意識しはじめて、寝れなくなったり、試合に出るのが怖くなったりもしました。もともとはミラノ・コルティナ五輪ではなく、4年後のオリンピックを目標にしていたんです。だから今回は、チャンスが1つ増えたと思って、オリンピック選考は意識しないで全日本選手権までをやっていくことにしました」
代表選考の重圧をうまくコントロールすると、見事に全日本選手権では4位となり、五輪切符を掴んだ。そこからの中井は腹をくくったように五輪のメダルへと激走していった。
「これだけ注目されるのは、認められた証拠だなと思うので、すごく嬉しい。注目を緊張や強さじゃなくて、ポジティブに捉えたいです。この怖さと向き合って乗り越えた先に、自分が成長したなと思えるはず。まだシニア1年目で競技生活も長いので、ここがスタートだと思ってオリンピックに臨みたいです」
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五輪をゴールだととらえずに、スタートだと思う。その気持ちで2月10日にイタリア入り。坂本花織から事前に「持ち物リスト」を送ってもらい、「抱き枕があると良いよ」と言われたので、自分の枕も持参した。12日のメインリンクでの初練習は、弾けるような笑みで滑った。
「楽しかったです! アクセルの調子もすごく良くて、好みの会場。怖さはありません。初めてのオリンピックで失うものはないので、どれだけ楽しめるか、です」
選手村では、海外の選手とバッジを交換して交流を楽しむ。無料で飲み物が出てくる自動販売機には「ピッやったら出てくる!」と感動した。
五輪で首位発進「人生のなかで一番最高の瞬間」
2月17日の女子ショート。第3グループの1番手だった中井は、勢い良くトリプルアクセルを決めるとパーフェクトの演技を見せる。78.71点の高得点で、まさかの首位発進となった。
「全然怖さがなくて、本当に楽しみでした。オリンピックの舞台でトリプルアクセルを決めて、『今、夢が叶った!』という気持ち。今までの人生のなかで一番最高の瞬間でした」
なか1日あけてのフリー。首位発進の中井は、最終滑走となる。当日夕方の公式練習では、何度もトリプルアクセルに挑戦するが、1回転半で両足着氷になる。一見すると、重圧で不調に陥っているように見えたが、実際は違った。
「緊張はまったくありませんでした。両足着氷で良いので、回転をかけることに集中して練習していました」
試合直前にむやみにトリプルアクセルを練習して疲れるよりも、回転をかけるタイミングだけ確かめていたのだ。それだけ落ち着いていた。
「メダルどうかなあ、という気持ちでした」
本番、冒頭のトリプルアクセルをクリーンに成功。ただ2つ目のジャンプ「3回転+3回転」が「3回転+2回転」になったほか、着氷の回転がギリギリだったものなど、いくつかのミスがあった。中井は首をかしげ、人差し指を頬に当てる。もはや伝説とも言われるポーズが、自然に出た。


