Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
坂本花織17歳「選ばれたら奇跡やな」緊張に震えた初五輪、「屈辱的なものを感じた」“代表漏れ”の低迷期も…日本フィギュア界のエースになるまで
posted2026/02/28 11:00
3大会連続で五輪に出場し、ミラノ・コルティナ五輪では個人・団体ともに銀メダルを獲得した坂本花織。精神的支柱として日本チームを支えた
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Sunao Noto/JMPA
印象的なスピンとともに曲が終わり、フィニッシュ。その瞬間、観客席の人々が一斉に立ち上がり、拍手で称えた。コーチに出迎えられると意外な言葉がこぼれた。
「怖かった――」
そのときの心境を振り返る。
ADVERTISEMENT
「今日は……今日もなんですけど、相変わらず緊張がすごくて、ショートの時よりだいぶ緊張していて、最初の(ダブル)アクセルで傾いてしまったのでヒヤッとしたんですけど、そこから最後まで持ちこたえられてよかったです」
11月13日、坂本花織はNHK杯連覇を果たした。前年がコロナ禍でほぼ国内大会同様のメンバーでの優勝だったことを考えると、実質的にNHK杯、そしてグランプリシリーズの初制覇と言えた。緊張と戦い、打ち克っての堂々たる優勝だった。
坂本はこれまで何度も“緊張”について口にしてきた。しかしその意味は、あの頃とは大きく異なっている――。
「選ばれたら奇跡やな」平昌五輪の記憶
坂本の名が広く知られたのは'17-'18シーズンのこと。シニアデビューを飾ったこの年は平昌五輪を目前に控えるオリンピックイヤーでもあった。ただ坂本自身、シーズンスタート時点ではこの大舞台を明確な目標としては捉えていなかった。
「(オリンピックに)出られるとは考えていなかったです。ほんと、最初は『選ばれたら奇跡やな』と思っていました」
それでもグランプリシリーズに初参戦するなど精力的に試合数を重ねるなかで、伸び盛りの17歳は大躍進を遂げ、全日本選手権2位に入り、一気に五輪切符を掴んだ。
“怖いもの知らずの女子高生”などとも言われたが、五輪本番では緊張を強いられた。
「公式練習のとき、『やばい、やばい』と思いました。今までの大会だったら、フェンスにスポンサーの名前とか書いてあるじゃないですか。それがオリンピックのマークだけ。目にしたとき、緊張が……」
団体戦のフリーはその緊張感にのまれるように出場選手中最下位の5位。そしてその後の個人戦のショートプログラムで5位に入り、フリーを最終グループで迎えることになったとき、再び緊張に襲われた。

