酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「村上宗隆選手は頭1、2つ抜けて…」筑波大学院卒のヤクルト若手アナリストが語る“プロ野球分析”のリアル「自分という人間を信頼してもらえないと」
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2026/03/01 17:00
ブルペンで、カメラの調整をするヤクルトの藤澤アナリスト
「コミュニケーションで気を付けているのは、僕が主導して何かアドバイスするということではありません。選手が本当に何を意識しているのか、どういうことに取り組みたいのか、何を目標にしているのか、などを選手から聞き出して、それを自分なりに噛み砕いて、こういうことがヒントになるんじゃないか、といった話をしようと思っています。選手の方から『そういうデータがあれば伝えて』、『もっとここはこういうデータがほしい』といったことを言ってくれる関係ができるのが理想かな、と思います」
——打者はトラッキングデータが中心になるのですか?
「そうですね。ホークアイが発展したおかげで、ゲームになるとスイング軌道やバットスピードのデータも取得できるようになりました。ホークアイが入って試合の生データと、練習でのデータの比較をして『この部分に課題があるよね』といったが、ゲームベースで話せるようになったのは大きいですね」
自分という人間を信頼してもらえないと
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——去年まではファーム担当でしたから、宮崎県西都市のファームキャンプにいて、今年から沖縄県浦添市になったわけですね?
「はい。基本的な流れは変わらないと思いますが、一軍はピッチャーを専門に見る永田俊紘アナリストもいらっしゃるので、僕はバッターを見ることがもう少し多くなるのではないかなと思います。 あとは対戦投手についてのミーティングをスコアラーさん(本年度からゲームアナリスト)が主導でやってくださるのですが、そこにトラッキングデータを見ることができる人間として加わって、意見をお伝えする機会が少し増えるかなと思います」
——シーズンが始まれば、神宮球場のホークアイで、自分の球団だけでなく相手チームの投打のデータを入手することができます。そういうデータに対して意見を言う機会も増えるのでは?
「スコアラーさんは、トラッキングデータの知識がある方ばかりですから、自分がどういうフォローができるかわかりません。選手もデータの知識を持っていますから、自分も勉強しながら選手に分かりやすく伝えることができたらいいなと思います」
——アナリストの中には、プロ野球の選手上がりの人と、純粋にアナリストとしての勉強をして入団した人がいます。藤澤さんは後者ですが、違いを感じることはありますか?
「やはりプロ野球の打席に立って球筋などを見たことがないので、感覚や打席内での戦術、目付けの位置などには、データの人間としてあまり口出しができない。テリトリーが違うと一線を引いた中で接するのは重要かなと思っています。
それ以前の問題として、僕がどういう風に仕事をしていて、どんなデータを取っているのか、それを通じて、自分という人間を信頼してもらえないと、何を話しても発展していかないと思います。だから毎日、どんなに短い時間でもいいから、たくさんの選手と話すようにしています」
ある程度、裁量権は頂いているのでは
——選手とアナリストの間には「コーチ」という存在がいます。コーチとアナリストの線引きが難しいのではないですか?

