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「周りの大人が判断を誤った」マリニンが泣き崩れた“大番狂わせ”の知られざるウラ側…シャイドロフのコーチは「世界一地味な五輪チャンピオン」だった
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田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2026/02/26 17:35
まさかの結果に終わったマリニン。しかし金メダリストとなったシャイドロフを祝福する姿を見せた
「世界一地味な五輪チャンピオン」
この大会で代わりに表彰台に上がったのは、ロシアのアレクセイ・ウルマノフ、カナダのエルビス・ストイコ、フランスのフィリップ・キャンデロロの若手3人だった。熱心なフィギュアファン以外には名前を知られておらず、「これ誰?」と言われても仕方のない顔ぶれだった。
ストイコはその後世界タイトルを3度手にし、初代「4回転王」になった。キャンデロロは愛嬌のあるキャラクターで日本でフィギュアブームを築き、キャンデロロ旋風を巻き起こした。二人とも4年後の長野オリンピックにも出場し、それぞれ2個目の銀メダル、銅メダルを手にした。
だが一方リレハンメル当時まだ20歳だったウルマノフはその後怪我に苛まれ、競技成績は伸び悩んだ。長野オリンピックのロシア代表を逃した後、1999年に競技引退。アイスショーの主役になることもなく、スポンサーがつくこともなく、世界一地味な五輪チャンピオンと言われた。
シャイドロフの横に座っていた白髪の男性
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実は今回優勝を果たしたシャイドロフの横に座り、一緒に点数を待っていた白髪交じりの眼鏡をかけた男性コーチこそが、そのウルマノフである。
数年プロ大会などに出演した後、彼はソチを拠点に地道にコーチ活動を続けてきていた。「自分が滑っているのと、教える立場では、全く違う体験です。今はこの若者に対する誇りの気持ちで胸がいっぱいです。ミハイルは、信じられないことをやり遂げた」とウルマノフはロシアのメディアに語った。
コーチになってからも決して華やかなスポットライトを浴びてきたわけではなかったウルマノフの、32年ぶりの2個目の金メダルである。
奇しくも二世代のサプライズ五輪王者となった、師と生徒。まだ21歳のシャイドロフが今後どのような活動をしていくのか、どのような選手に成長していくのか、見守っていきたい。


