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「周りの大人が判断を誤った」マリニンが泣き崩れた“大番狂わせ”の知られざるウラ側…シャイドロフのコーチは「世界一地味な五輪チャンピオン」だった 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2026/02/26 17:35

「周りの大人が判断を誤った」マリニンが泣き崩れた“大番狂わせ”の知られざるウラ側…シャイドロフのコーチは「世界一地味な五輪チャンピオン」だった<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

まさかの結果に終わったマリニン。しかし金メダリストとなったシャイドロフを祝福する姿を見せた

5本の4回転を降りたシャイドロフが優勝

 一方優勝したシャイドロフは、プレッシャーはほとんどなかったのに違いない。昨年の世界銀メダリストである彼は、3アクセル+1オイラー+4サルコウなど、他に誰も成功させたことのないコンビネーションジャンプを武器に持つ。その一方でスケーティングやスピンなどの技術はまだまだで、今季の前半ではかなり厳しい判定を受けてスコアが伸び悩んでいた。だが男子フリーでは、5本の4回転を成功させ(1本は4分の1回転不足)最後まで大きなミスなく滑り切った彼をおいて、優勝に相応しい選手はいなかった。

 実はオリンピックにおけるフィギュアの大番狂わせは今回だけではない。五輪には魔物が棲むと言われる所以だ。そのほとんどが、なぜか男子なのだ。

優勝候補3人が揃ってメダルを逃した“番狂わせ五輪”

 まだ人々の記憶に新しいのは、2018年平昌オリンピックでのネイサン・チェンだろう。優勝候補として初挑戦したが、SPで驚きの17位に。その後フリーで4回転を6回降りて、総合5位まで駆け上がった。

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 2002年のソルトレイクシティオリンピックでは、2年近く転倒などしたことのなかったエフゲニー・プルシェンコが、SPの4回転トウループで尻もちをついて4位スタートに。当時の採点方式ではSPでトップ3位内に立たないと自力優勝は不可能で、優勝をライバルのアレクセイ・ヤグディンに譲って2位になった。

 だが近年で最大の番狂わせだったオリンピックは、1994年リレハンメルの男子だろう。当時ISUはプロに復帰を許し、1988年五輪王者のブライアン・ボイタノ、1992年五輪王者のヴィクトール・ペトレンコ、そして五輪は無冠ながら4度世界タイトルを手にしたカート・ブラウニングと3人の王者が揃った。

 3人が表彰台に並ぶことは間違いない。問題はメダルの色だけ。そう言われていたのに、3人ともSPで大きなミスをして最終結果は4位、5位、6位と誰一人表彰台に上がらなかった。

 得意だった3アクセルでミスをしたボイタノは数年後、筆者に「SPの日、ジャンプの着氷で何か大きなものに上から押さえつけられるような圧力を感じたんです」と語った。

【次ページ】 「世界一地味な五輪チャンピオン」

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