フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「周りの大人が判断を誤った」マリニンが泣き崩れた“大番狂わせ”の知られざるウラ側…シャイドロフのコーチは「世界一地味な五輪チャンピオン」だった
posted2026/02/26 17:35
まさかの結果に終わったマリニン。しかし金メダリストとなったシャイドロフを祝福する姿を見せた
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田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
2月21日、ミラノ・アイススケートアリーナでトップ選手たちのエキシビションが行われ、2026年ミラノ・コルティナオリンピックのフィギュアスケートも幕を閉じた。男子のトリを務めたのは、新チャンピオンのカザフスタンのミハイル・シャイドロフである。
日本のアイスショーでも演じたことのあるプログラム「カンフーパンダ」だが、まさか五輪金メダリストとしてパンダの着ぐるみで滑ることになるだろうとは、シャイドロフ自身も、振付師のイヴァン・リギニも予想してはいなかっただろう。
大番狂わせだった男子フリー
Anything can happen in figure skating. (フィギュアスケートでは何が起きるかわからない)と最初に言ったのは誰だったのかわからない。筆者がこのスポーツの取材を始めた1993年にはすでに常套句になっていた。
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だがミラノオリンピックの男子フリーほど、全世界が驚いた大会も珍しいだろう。2年連続で世界選手権タイトルを手にして無敵と思われていた米国のイリア・マリニンがまさかのメルトダウン。予定していた4アクセルを1回転半にし、さらにジャンプで2度転倒して総合8位に終わったのだ。
他の種目では何が起きても、男子はマリニンが優勝することだけは確実だと関係者のほぼ全員が思っていた。だが「4回転の神」も、人の子だった。演技終了後、両手で顔を覆って泣き崩れたマリニンの姿は見ていて胸が痛んだ。
「周りの大人が判断を誤った」とコーチ
「本人のせいではない、と彼に伝えたんです」とコメントしたのは、コーチ陣の一人であるラファエル・アルトゥニアンだ。「周りの大人たちが、判断を誤ったのです。でもその詳細については、言わないでおきましょう」
アルトゥニアンコーチが言わんとするのは、おそらくマリニンのスケジュールと精神面の管理のことではないかと思う。米国ではマリニンへの注目度は半端ではなく、オリンピックの米国独占放映権を持つNBCのポスターボーイだった。
チームユニフォームを着た姿のファッション撮影、スヌープ・ドッグなどの有名人との絡みなど、数えきれないほどのPR企画に出演し、本人が選手村の雰囲気を満喫する様子も流れた。21歳の彼にとって、集中力を維持するのは至難の業だったに違いない。加えて本人はその後、SNSの悪意ある書きこみに心が動揺していたことも告白した。


