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《偏差値68》国立大の語学エリートが「意外な男女混成競技」で“日本インカレ連覇”のナゼ…スポ薦ゼロの「初心者集団」が学生日本一になれたワケ
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by東京外国語大学公式HPより
posted2026/02/24 11:00
スポーツ推薦のない超小規模な国立大学である東京外国語大学。そんな大学で「ある部活」が日本学生界の頂点に立った秘密は?
東外大の小さな体育館で、そんな若生の目に映ったのは絵にかいたような「小規模国立大学の体育会」らしいリアルだった。
部員はわずか十数人ほど。演技技術は拙い以前に基本の理解ができていない。スタンツ(※人を持ち上げたり空中に飛ばす技術)やジャンプなど華やかな演技に必要な選手のフィジカルは、傍から見てもアスリートとは程遠い。
練習日も少なく、あやふやな理由での欠席者も多かった。しかも部にはそれを咎める空気感もない。代表レベルで戦っていた男からすれば、端的に言えば面食らってしまうような状況だった。
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「まず身体能力で言えば、まったく勝負の場に上がれるようなレベルではありませんでした。プログラムにしても、とりあえず演技を作ってただただみんなでそれをこなしている……という感じでしたから」
では、なぜそんな「スポーツ不毛の地」に元日本代表が降り立つことになったのか。
「私も男女の混成チームで代表に入っていましたから、混成競技の裾野を広げたい思いはあったんです。そんな中で東外大には当時から珍しく数名の男子部員がいた。その部員から私が競技役員を務めていた大会場で『もしできるなら、男女混成チームの指導をしてほしい』と声をかけられたんです」
上述のように、日本ではチアリーディング競技の主流は女子部門だ。当時は男女混成部門への参加チームはそれほど多いわけではなかった。それだけに若生としても自分が情熱を注いだ混成部門の指導への想い自体はない訳ではなかった。
「“勝負”の場に上がるレベルではない」けれど…?
とはいえ、大会でも当時はほとんど聞いたことのない大学チームである。コーチに就くとなれば、すでに社会人として普通に勤務している若生からすれば時間のやりくりも必要になる。元代表というプライドも、もちろんあった。
「本気でやらないなら私もコーチはできないよ」と伝えたうえで、一度練習を見に行くことにした。それが最初のきっかけだったという。結果的に見に行った部のレベルは、若生が言うように「競技として“勝負”の場に上がるレベルでは全くない」状況ではあった。
ただ、その一方で意外にもネガティブな思いは抱かなかった。選手たちの「強くなりたい」という想い自体は不思議と感じることができたからだ。
「チーム全体から、やる気がないのではなく、どうすれば強くなれるのかがわかっていないという印象を受けたんです」
結局、その直感を信じた若生は、コーチを引き受けることにした。

