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「あいこの時間も必要」中谷潤人が語るボクシングジャンケン論 “グー、チョキ、パーすべて出せる”井上尚弥を超えるイメージ「最高の中谷潤人をつくる」
posted2026/02/02 17:02
スーパーバンタム級初戦で思わぬ苦戦を強いられた中谷潤人が12Rにわたる激闘の舞台裏を明かしたインタビュー(後編)
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
ジャンケンで言えば「あいこの時間も必要だった」
中谷潤人は、ボクシングの駆け引きをジャンケンに見立てる。
たとえば絶えずプレッシャーを掛けて手数を止めないセバスチャン・エルナンデスの戦い方を「グー」とするならば、「パー」を出せば勝ちにつながる。これは一つの形、一つのパターンを指すのではなく、あくまで勝ち筋という意味での表現である。同じ「グー」で付き合う形を続けてエルナンデスを「チョキ」にさせていくのか、それとも「あいこ」のうちにどこかで「パー」に切り替えるのか。エルナンデスが勢いづいていることを考えれば自分が「チョキ」にさせられる可能性だってあった。
10ラウンド、中谷は接近戦に付き合うことをやめて、アウトボクシングに切り替えた。距離を取って、エルナンデスの前進をいなすようにヒット&アウェーに軸を置いた。これがペースを変える「パー」になり、ジャッジ3者から支持されている。勝負の分水嶺となり、最終盤に流れを引き戻したことで接戦をものにした。
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「(9ラウンドに)見栄えの悪いパンチのもらい方をしていたし、コーナーからも“足を使え”と言われていたので、遠い距離で戦っていこう、と切り替えました。ジャンケンのたとえ話でいくなら、あいこの時間も必要ではありました。あいこがなかったら、しっかりとパーを出せなかったはずなので。ただあいこそのものの質を高めないといけない。グー、チョキ、パーすべての質を高めておいて、頭を柔らかくして何を出すかを決めていくスマートさ、判断力がもっと必要だとは感じました」
スマートに「パー」に切り替えられなかったという反省はある。しかし手数が湧き出るエルナンデスのボクシングに飲み込まれなかったのは「あいこ」で踏ん張り続けたからとも解釈できる。アウトに切り替えるにしても、タイミングを一つ間違えてしまえば弱気から出た選択と受け取られて逆に攻勢を許すリスクもある。つまり「パー」を出すつもりが「チョキ」にさせられるかもしれなかった。ギリギリながらペースを変えるべく「パー」とできたのは、積み上げてきたキャリアによる勝負勘ゆえだろう。
師のルディ・エルナンデスからは試合後、「よく頑張った」と声をかけられた。正面で構えた時間が長かったとはいえ、陣営の指示を耳に入れながら窮地をしのいだことを労われた。ルディからはロサンゼルスで1日20ラウンドのスパーリングを課せられていたことから、苦しい削り合いとなったこの試合でも最後までへばることはなかった。
すべて想定内にするポリシーとジャンケン論
話は脱線して昨年6月に行なわれた西田凌佑とのWBC・IBF世界バンタム級王座統一戦に話が及んだ。あのときの中谷はエンジン全開で前に出ていって、ワイルドに強打を打ち続ける作戦を敢行して6回TKO勝利を収めている。クドいようだが、ジャンケン話が面白かったので「もしこの作戦をグーだったとするなら?」と敢えて振ってみた。


