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「セカンドの後ろにサッカー部」「練習は5班でローテ」でも…偏差値68“奈良の公立進学校”の野球部がナゼ強い? 指揮官が語った“弱者の兵法”のヒミツ
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田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/02/03 11:04
昨春は強豪・智弁学園をコールド勝ちで破ると夏も県大会でベスト8まで進出。普通の公立校である畝傍の躍進の理由は?
両校は高校野球において、まったくと言っていい無名である。だが「野球を教えたい」「野球をしたい」という行動原理がある以上は、そこに必ず熱量が存在する。
ここに雀部は、胸を打たれた。
「指導する先生方が熱心に生徒たちと対話を繰り返してきたからで、そういう姿を見ながら大事なことを学ばせていただきました。野球って、どうしても指導者の指示で選手が動いてしまう風潮があるんですけど、今はトップダウンの時代ではありませんし。指導者として学んだ自分と現役選手の考え方をうまく合わせていけるようにしたいというか。そのために、どんどん話していくことが大切なんだろうなと思っています」
「私学の熱量には敵わない」という実情も
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高校野球を生きる者たちには熱があるが、一律ではない。
高校から親元を離れ、甲子園や日本一を成し遂げるため人生のすべてを懸ける強豪校の選手に比べれば、文武両道を志す彼らとはどうしても温度差が生じてしまう。
22年に母校に赴任し、24年から監督を務める雀部も「私学で野球を頑張っている選手の覚悟や気持ちの強さ、熱量には敵わないものがあります」と、実情から目を背けない。
そのなかでも、畝傍は「甲子園1勝」という目標を掲げている。
実現のため雀部がチームに求めているのは、「当たり前の基準」を上げること。
「甲子園とは簡単に言ったところで、僕も実際に行っていないので具体的に何をどうすればいいのかは手探りで。でも、達成するための行動をちょっとずつ上げていければ、そこに繋がる道が見えてくるのかな、と」
シーズンオフの今ならば、雀部が平城時代から交流のあるパーソナルトレーナーから得た情報を落とし込んだうえで、ウエートトレーニングのメニューを作成する。さらにはホップ成分の高い140キロ超えのストレートが魅力の現エース・高岸彰良など、選手が希望すればその彼が運営する施設でのトレーニングも推奨する。先に述べたように、畝傍には「これを必ずやれば」というマニュアルは限りなく少ない。選手それぞれが、当たり前の基準を伸ばすために努力をする。
キャプテンの日比克もそうだ。
智弁和歌山の主力で幼馴染の松本虎太郎など、日比の周りには強豪校で腕を磨く選手や甲子園経験者の年上が多いという。彼らが実際にやってきたトレーニングなどの情報を収集し、チームに還元しているそうだ。

