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「セカンドの後ろにサッカー部」「練習は5班でローテ」でも…偏差値68“奈良の公立進学校”の野球部がナゼ強い? 指揮官が語った“弱者の兵法”のヒミツ
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田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2026/02/03 11:04
昨春は強豪・智弁学園をコールド勝ちで破ると夏も県大会でベスト8まで進出。普通の公立校である畝傍の躍進の理由は?
練習時間に制限はないというが、平日は授業が終わった16時から遅くとも19時半まで。夜には定時制の授業が始まるため20時には下校しなければならないと、生徒たちは認識している。こういった事情から、野球部は5班程度に分かれ、時間制で効率よく練習を回す。環境に恵まれずとも工夫し、密度を濃くする。畝傍にとっては当たり前なのだ。
また、大会が近づけば、クラブを挙げての協力態勢が自然発生する。野球部からサッカー部などに「17時半からノックしたいんで広く使わせてもらっていいですか?」と願い出る。相手が練習試合をするとなれば、今度は野球部が場所を提供する。そういった助け合いもあるからこそ、選手たちはストレスなく練習に精を出せるのである。
「自分たちで考えて動いている」…畝傍の強みとは?
監督の雀部にも悲観の色はない。
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「今の時代って子供たちで情報を得られるんで、取捨選択をして実践するのはすごく難しいと思うんです。そのなかで、僕がここに赴任してから見ていると、自分たちで考えて動いているな、と。指導者が見ていないところだと、ちょっとは手を抜きたいでしょうけど、アカンところは厳しく指摘し合えたり、『こうしたほうがええんちゃうん?』とか話し合って練習を組んだりするんで『しっかりしてんねんなぁ』って思います」
雀部自身、畝傍高校野球部の出身であることから、後輩にあたる選手たちの高い意識を語る表情も自然と和らぐ。
高校時代を回想する雀部は「今の子たちに比べると、全然考えてなかったなって」と、自嘲気味に口角を上げる。高校生だった2002年から04年は、学生でも気軽に撮影機能付きのガラケーを所有できるようになっており、エースだった雀部はチームメートにピッチングやスイングを撮影してもらいながら、自分のフォームと向き合った。彼自身、当時の“最先端”を駆使していたのである。
「いつの時代も選手たちは考えている」
そう実感できたのは、指導者になってからだ。大阪教育大学を卒業後に赴任した吉野高校は、まともに部員が揃わず大会出場もままならないチームであっても、朝練などで自主的に体を動かしていた。次の赴任先である、現在は閉校となった平城高校では、パーソナルトレーナーから練習メニューの手ほどきを受けるなど、選手たちには向上心があった。

