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「ピカソ選手は驚いたと思う」体格差は歴然なのに…井上尚弥が敗者ピカソに浴びせた“161発のジャブ”、なぜ圧倒できたのか? 怪物と最も拳を交えた男が解説
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森合正範Masanori Moriai
photograph byGetty Images
posted2025/12/31 06:50
12月27日、アラン・ピカソに12回判定勝利を収めた井上尚弥
井上が浴びせたジャブは161発
顔面をガードしたピカソに井上はジャブを打ち込んだ。CompuBoxによると、試合を通じてヒットしたジャブは井上が161発(37.8%)、ピカソが63発(28.9%)で数、精度ともに井上が大きく上回った。
――ピカソ選手はがっちり顔をガードしていましたね。
「なので、そういった意味で最初に言ったボディジャブからの右アッパー、左ボディですかね。今回、自分の中ではすごく目立つコンビネーションだなと思いました」
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――誰もが、井上選手の踏み込みは恐ろしいほど速いと言いますね。
「はい。あと、今回でもよく上体を揺らしたり、頭を振るシーンがあったじゃないですか。ああいう細かいフェイント。毎回声を大にして言いますが、本当に基本的な動きというか、井上選手はそれを極めているんで、基本に見えなくなっているけど、打つ前、相手の前にいる時は頭を振りましょうとか、基本的なことをどの場面でもやっている。今回も打った後にすぐ回ったりとか、先に打つとか、指導者が言う当たり前のことです」
――基本の徹底ですね。
「あと、井上選手って、結果的に先に打ってるんですよ。僕が先にジャブを打とうと思った瞬間に、打ってくる。これはもう動きのカウンターです。パンチのカウンターではなくて、動きを先に被される」
対峙した者だけが分かる“動きのカウンター”
――動こうと思った瞬間に。
「パンチに対してのカウンターじゃなくて、動きに対しての動きのカウンターっていうんですか。お互いが見合っていて『行こう』というときに、先に被せてくるんです」
――見ている人はカウンターだと思わないですね。
「そうですね。多分普通に打ってるように見えるんですよ。やってる側からしたら先回りされた、みたいな感覚になるんです」
――相手としては「行こう」と思った瞬間に打たれたら、展開を作りづらくなりますね。
「そうなんです。後手後手になっちゃうんで。そうするとピカソ選手のようにガードを固めて……となってしまう」

