炎の一筆入魂BACK NUMBER
「漠然と打っていた今までとは違う」プロ8年目に開花した昨季、カープ中村奨成が掴んだ“理想の打撃”の構築方法とは
posted2026/01/05 11:00
昨季は実質キャリアハイの成績を残した中村
text by

前原淳Jun Maehara
photograph by
Sankei Shimbun
新たな1年が幕を開ける数週間前、マツダスタジアム隣接の屋内練習場で自主トレを終えたカープの中村奨成は報道陣に囲まれていた。にこやかな表情を浮かべながら、ひとつひとつの質問にしっかりと自分の言葉で答えていた。
「シーズンではある程度打てていましたけど、自分の感覚的にはまだフォームも完成していない。安定もしていないので前半戦で打てなかった。特に6月はスタメンから外れて(立場も)危なかった。ああいうのをなくさないとスタメンで出続けられない。大きく変えることはないですけど、無駄な動きをなくしたい」
その言葉からは以前のような勢い任せの前向きさではなく、結果と向き合った者だけが口にする重みが感じられた。丁寧で穏やかな受け答えは入団時から変わらないが、そこに宿る深みは明らかに違う。
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これまでは言動にどこか軽さが感じられた。経験値の浅さの影響もある。PL学園高の清原和博を抜く甲子園1大会6本塁打の記録を打ち立て、2017年ドラフト1位で入団するも、24年までの7シーズンで118試合の出場にとどまった。
打撃センスは誰もが認めるものを持ち、二軍では格の違いを示していたが、結果を残せなかったことで具体的な指標を立てることができなかった。それでもメディアの前に立てば、自身を奮い立たせる強気な発言が目立つ。そんな姿が現実と理想の距離感をつかめていないように映っていた。
充実のオフ
ただ、今オフは違う。8年目を迎えた昨年、ようやく停滞感を破った。「1番・センター」を中心に起用され、104試合に出場した。打率.282、9本塁打、33打点。規定打席に到達しなかったものの、OPS.760はチームトップと才能の片鱗を示した。
前年までの通算213打席を大きく上回る368打席に立った経験により、曖昧だった理想と現実の距離感を測ることができた。漠然と取り組んでいたこれまでのオフとは明らかに違う。経験が言動を変えた。初めて地に足をついて過ごすオフ。本人も思わず「プロ野球選手っぽいことを言えるようになりましたね」と白い歯を見せる。
10月の右足首手術からのリハビリ期間を終え、打撃の構築に重きを置く。打撃フォームは昨季開幕直後に矯正したもので、シーズン中も未完成だった。構えから手首の角度、左足を上げる高さなど、傍目では分からない細かな動きの確認と微修正を繰り返している。

