「意外と行けるかな…」箱根駅伝5区山上りで区間記録更新を狙う城西大学・斎藤将也の自信を裏づける資質と強化策

　城西大学の斎藤将也（4年）は最後の箱根駅伝に特別な思いを抱いて山に挑む。

「希望区間はありません。でも自分が5区に行くしかないと思っています。今は目標の往路優勝、総合3位しか考えていないので、そこに貢献できるように自信を持って走ります」

　入学時から潜在能力を高く評価されていた逸材だ。箱根駅伝5区で活躍し、後に区間新記録（当時）をマークした山本唯翔（現・SUBARU）に1年時から上りのレースで先着するなど、早くから5区の適性を示していた。だが本人は山への興味は示さず、2年時まで連続して2区に出走。山本が卒業後の前回も2区への思いは断ち難く、櫛部静二監督と直前まで相談を繰り返した末、チームへの貢献を考えて5区出走を決断した経緯がある。

　しかし、大会1週間前に発熱したために万全のコンディションで臨めず、箱根駅伝5区への初挑戦は区間3位に終わった。決して悪い記録ではなかったが、「区間賞、あわよくば区間新」と考えていただけに落胆は大きかった。レース後の斎藤の口調は明るかったものの、自分の走りに納得していない様子がありありと窺えた。

「レースは嘘をつかないですね。調整段階にミスし、最後の練習で追い込めなかったので、自分の走りには程遠かったです」

　そしてこう付け加えた。

「来年は本気で『山の神』を取りにいきます。芦ノ湖で赤いユニフォームが1番でフィニッシュするイメージを持ちながら、1年間取り組んでいきます」

　言葉の通り、この1年は箱根駅伝5区を意識しつつ強化をしてきた。そこで「納得できる走りをして、チームの目標に貢献する」ことが、大学で最後にやるべき責務だと斎藤は話す。

箱根駅伝では2年生まで連続して2区を走った　©Yuki Suenaga

将来を見越した強化策

　今季は夏までは故障に苦しんだこともあったが、秋以降は順調に強化が進んでいる。「城西大の強みは山」と見られており、その強さは他の大学も警戒している。斎藤の走りがチームの浮沈の鍵を握ることは間違いない。

　斎藤の上りの強さはどこにあるのだろうか。10000mのベスト27分45秒12の走力が要因であることは言うまでもないが、上りでフォームが変わらない点もまた山での強さの要因である。それは斎藤が持って生まれた資質であり、加えて城西大での強化の成果でもある。櫛部静二監督はこう説明する。

「上りを走る選手は基本的に前傾姿勢のフォームで走りがちです。しかし将也は上りの先を見て走っています。つまり斜面に対し、直立に近いフォームを維持できるのです。そうすることで平坦を走るときと同じ動きになり、ピッチを維持し、接地での地面に伝える力も大きくなります。その特性を生かすためにウェイトトレーニングで身体の強さを作り、上りの走りの中で動きを高めてきました」

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