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20歳の新鋭フェルミン・アルデグエルがMotoGP初優勝 マルケス復活戴冠の裏で進行する確実な世代交代の予兆
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/10/08 06:00
インドネシアGPで優勝争いを繰り広げたアルデグエル(左)とアコスタ
アルデグエルとアコスタが1、2フィニッシュしたことで、これが世代交代の始まりだという声も多く聞かれる。これから先、2人がMotoGPクラスを背負って立つことになるのは確実だが、今大会の決勝レースは序盤から大荒れだった。
まずはマルクと前日のスプリントで優勝しているマルコ・ベゼッキがオープニングラップに接触転倒してともにリタイア。事故は右高速の7コーナーで先行するマルクに後ろにつけるベゼッキが追突するかたちで発生した。マルクはもんどりうってグラベルを転がり、ベゼッキもコースアウトした後、グラベルで激しく転倒した。
優勝候補の2人がコース上から姿を消すと、日本GPの優勝で本来の走りを取り戻したと思われたドゥカティのフランチェスコ・バニャイアも、レース序盤で早々に転倒リタイア。ドゥカティ・ワークスにとっては2人のライダーが転倒リタイアする今季最悪のレースだったが、獲得済みのコンストラクターズタイトルと個人タイトル(マルク)に加え、最後に残していたチームタイトルが確定するという結果となった。
人の子だった最速王者
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日本GPで6年ぶりのタイトルを獲得して珍しく大粒の涙を流したマルクは、今大会を正常な精神状態で迎えられなかったのかもしれない。大きな達成感の後に襲ってくる虚無感とでもいうのだろうか。日本からインドネシアに移動してきても取材やイベントに追われてゆっくり休む時間もなく、開幕前には疲労がピークに達していることを感じさせるコメントを残していた。
「これまでの経験の中で一番疲れている。何か大きな目標を達成すると、アドレナリンが少し落ちるもの。これまでと同じ集中力をキープするのは難しいが、ミスをしないようレースに挑む」
さらに、インドネシアGPの行われるマンダリカは、マルクにとっていい思い出がないサーキットのひとつ。それも最悪の結果に影響したのかもしれない。
ホンダ時代の22年は決勝日のウォームアップで大転倒を喫し、脳震盪のために出場できず。23年はスプリント、決勝レースともにリタイア。ドゥカティに乗り換えた24年はスプリントで3位も決勝はトラブルでリタイアに終わっていた。

