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「僕に資格はない」レッドブル・チーム代表に苦言を呈された角田裕毅が、献身的なレースで信頼を取り戻すまで

posted2025/09/26 11:02

 
「僕に資格はない」レッドブル・チーム代表に苦言を呈された角田裕毅が、献身的なレースで信頼を取り戻すまで<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

アゼルバイジャンGP決勝レース後、固い握手を交わすフェルスタッペンと角田

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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Getty Images / Red Bull Content Pool

 9月上旬のイタリアGPでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが5月のエミリア・ロマーニャGP以来の勝利をおさめた。レース後にはレッドブルがチームスタッフ全員を揃えての記念撮影会を催したが、そこでいつもと異なる光景を目にした者たちは思わず胸を痛めた。

 9戦ぶりの勝利を祝うスタッフの中には角田裕毅の姿もあった。しかし、角田がいたのはドライバーがいるべき、最前列中央のフェルスタッペンの隣ではなかった。フェルスタッペンは角田を中央へ招き入れようと「こっちに来て、一緒に祝おう」と声をかけたが、角田はその誘いを「僕は、いまそこへ行く資格はない」と言って拒み、集団の一番端にとどまったのだ。

 このレースで角田は13位に終わっていたが、自分の成績がどうであれ、チームメートがチームの勝利を祝うのはごく普通のこと。たとえば今年の日本GPで角田は12位に終わったが、優勝したフェルスタッペンを最前列で祝っていた。

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 優勝はひとりのドライバーだけの力によるわけではない。たとえ一方のドライバーのレース結果が芳しくなくとも、そこに至るまでのマシンのセットアップデータやタイヤのロングランデータは、チームメートのパフォーマンスに生かされているからだ。

角田がチーム代表に非難された理由

 しかし、角田は集団の中央に行くことを拒んだ。それは単にレース結果が期待外れに終わっただけでなく、その内容に納得がいかなかったからだと考えられる。

 イタリアGPで角田はポイント圏外に終わっただけでなく、姉妹チームのレーシング・ブルズのリアム・ローソンと接触事故を起こしていた。1コーナーでオーバーテイクしたものの、次のブレーキングポイントで横に並びかけられ、接触したのだ。

「ローソンは前のレースでも接触事故を起こしていた。レースだから事故は避けられないけど、越えてはいけない一線があるはず。特に僕たちは姉妹チームなんだから、お互いリスペクトしなければならないはずなのに、こうなってしまったことは本当に残念」

 角田はレース後、そう言ってローソンを非難した。

 だが、その直後に記者会見したローラン・メキース代表は、角田に反省を促した。

「レース結果も大切だが、重要なのはクリーンな走行データを持ち帰ること。でも、今日のユウキは接触事故でフロアにダメージを負い、サンプルとしては不十分だった。週末を通してクリーンな走りをして、パフォーマンスを分析できる良いデータを持ち帰ってほしい」

 記念撮影会が行われたのは、その後のことだった。

【次ページ】 チームのために角田がとった最善策

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