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「準備は100点、実力が不足」世界に歯が立たなかった箱根駅伝勢…世界陸上5000m・10000mで見えた弱点“ペース変化”「日本だとあそこまでは…」
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佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/23 11:03
東京世界陸上男子10000m決勝を走る日本代表、葛西潤と鈴木芽吹。箱根駅伝で活躍したトップランナーの彼らも、世界の戦いの厳しさを思い知らされる格好になった
日本のレースはペースが安定しているが……
日本でのマラソンやトラックはともに、レース終盤まではしっかりとペースを刻み、淡々と進んでいく。日本の選手はその展開に慣れており、一定のペースだと速く走ることはできる。だが、世界のレースは、いわばアクセルとブレーキを交互にかけながら走る。その結果、想像以上に足を使い、終盤戦の勝負の前に足が「売り切れて」しまうのだ。
実際、今回の10000mでも、3000m付近で葛西が一度前に出て自分のペースを刻もうとした場面があったが、結局うしろに回収された。7600mでは葛西と鈴木がともに再度前に出たが、そこで足が重くなり、8500m手前あたりで先頭集団から離れ、勝負する前に終わってしまった。
「僕は練習のなかで変化走を取り入れているんですけど、そこまで激しくやっていないので。そういうのを、もっとやっていかないといけないのかなと思いました」
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そういって鈴木は、表情に悔しさを滲ませた。
ペースの上下についていけなかった森
一方、5000mに出場した森はスタートから後方についてレースを俯瞰していたが、やはりペースの変化に対応できなかった。
「1000mを超えたぐらいから集団のなかでの出入りが激しく、そこの変化につき合っていたらキツくなると思っていました。4000mまでうしろでついていき、一気にペースが上がった1段階目はついていけたのですが、その後はキツかった。最終的にトップと100mぐらい、15秒の差をつけられてしまいました」
レース展開を見ると、1000mから3000mの間は約2分45秒ペースだったが、3000mから4000mでは約2分38秒に上がっている。ただ、その1000mのうちにも人の出入りでペースの変化があり、決して一定のペースで進んだわけではなかった。森は、そういう変化のダメージとペースアップに対応しきれず、4000m以降もたなかったのだ。本来ならラストスパートで相手を突き放す、あるいは順位を上げていくのが森のレースだが、逆に順位を落としていった。


