甲子園の風BACK NUMBER
“偏差値70の甲子園常連校”は「進学実績も重要」「中学生も保護者も高校野球後を気にしている」野球脳を鍛えつつ…どう球児集めをしているか
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間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/13 06:01

2018年センバツでの静岡高校
「1から10まで言われたことを一生懸命に100%こなす取り組みは素晴らしいです。でも、それだけでは勝負を分ける局面で力を発揮する選手は育ちません。判断力や感性を磨くために、普段の練習から野球脳を鍛える必要があると考えています」
状況に応じてベストな判断やプレーをする力を伸ばす池田監督の方針は、ノックにも表れている。
全国優勝を部訓とする静岡高校では、甲子園出場校の能力を基準に練習している。ノックであれば、打者の一塁到達タイムや二塁走者がホームインするまでのタイムなどを細かく設定し、アウトを取るために精度を高めてきた。その重要性を認識した上で、池田監督は「相手を見たディフェンス」に重点を置く。
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「設定タイムをクリアするのはすごく大事で、プレーのスピードを上げる高校があります。ただ、実際の試合で、そこまで急いでアウトを取りに行く必要がない場面もあります。最速タイムを狙う練習だけではなく、相手の特徴を意識した練習に変えました。選手が考える機会をつくりたいので、私の口数は減りましたね」
判断や選択には根拠が必要だからこそ
相手を見る考え方は攻撃でも同じ。例えば、無死一、二塁で送りバントのサインが出た際、打者は相手の三塁手前に転がすのが定石。だが、守備位置や各内野手の守備力次第では、一塁側に転がした方が成功率を高められるケースもある。また、一二塁間や投手の後ろを狙ったプッシュバントが有効なケースもある。
走塁でも次の塁まで全力で走るよりも、ベースの手前でスピードを緩めて相手守備の捕球体勢や打球のバウンドを注視した方が良い場面もある。常に全力が必ずしも正解とは限らないのだ。
池田監督は「判断や選択には根拠が必要です。試合では相手をよく観察して情報をインプットし、準備しておくこと。その準備が根拠となり、思い切りの良いプレーが生まれます。普段の練習では試合の場面を想定して、最適なプレーを瞬時に導き出す力を養います」と語る。
中学生も保護者も“高校野球後”を気にしている
自主自立で成長を促すとともに、その後の進路にも向ける――つまり「進学実績」も重視している。