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ホンダのMotoGPエンジンを外国人が設計…「エンジンのホンダ」が下した決断は吉か凶か? 最速エンジンをつくったエンジニアの実力とは
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/07/02 11:00
苦戦が続く2025年型RC213VとHRCのエース、ジョアン・ミル
振り返れば、RC212V以降は「速いホンダ」のイメージは薄らいできた。この数年はドゥカティを筆頭にKTM、アプリリアが台頭。今季、長い低迷をやっと脱しつつあるホンダだが、イタリア、オランダと続いたこの2連戦は、再び厳しい戦いを強いられた。
怪我で欠場のルカ・マリーニの代役としてホンダワークスからイタリアGPに出場した中上貴晶は、その要因を「エンジンのパワーを上手く路面につたえられない。バイクが横にスライドして、あばれる感じでうまく加速していかない」と語る。
最近のホンダエンジンは遅いというのが定評だが、遅い=エンジンパワーが足りない、とは簡単に言い切れない。NSR500、RC211Vでホンダが圧倒的に強かった時代は、ライバルメーカーに対して圧倒的にアクセレーションが良かったという声が多い。つまり「パワーがあり、かつ、乗りやすいバイク」だったのだ。
トリブはどんなホンダエンジンを作るのか
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現在のMotoGPクラスは、シリンダーの内径が81mm、4気筒と決められている。エンジン回転数は1万9000回転。圧縮比16前後という技術的に恐ろしいスペックになっているが、トリブは果たしてどんなホンダエンジンを作るのか。初の外国人エンジニア加入の成果が出るとすれば27年以降になるのだろうが、いろんな意味で興味深いニュースである。
トリブは身長190cm、体重は100kgを超える大柄な人物で、おそらく日本のHRCで開発に従事することになると予想される。この大柄な人物がホンダの社内を闊歩している姿を想像するだけで面白い。
この数年のホンダの外国人起用は、EVや燃料電池への資金と人材の集中、そして技術の多国籍化というレース界の時代の流れに乗ったものだと思われる。だがその一方で、我々が期待する“ホンダらしさ”が稀薄になっていることは間違いない。


